dream
□演技か、本性か
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「なぁななし…最近悩んでることがあるんだが」
二人で釣りをしている最中、カラ松が唐突に悩み相談をしてきた。
…かっこつけずに珍しく素で話している点からして、真面目な相談なのだろう。
「どうしたの?私でよければ話くらいは聞くけど」
兄弟ではなく、幼馴染みの私に打ち明けてくる辺り、兄弟絡みの話だろうか。
一松が冷たいとか、トド松が酷いとか。
「…何故、俺には彼女が出来ないんだろうか」
「えっ。……今更?」
その後も色々と突っ込もうとしたが、カラ松があまりにも真剣な眼差しで見つめてくるものだから、言葉に詰まってしまった。
「ななし、教えてくれ。女のお前から見て、俺に足りないものは何だと思う?」
「…足りないもの、か」
…ニート、童貞、へたれ、痛い革ジャン、グラサン、クソタンクトップ……余計なものはたくさんある気がするが。
それはひとまず置いておいて、とりあえず言われた通り、カラ松に足りないものとは何かを私なりに考える。
「……。……厳しさ、かな」
「厳しさ?」
「うん。カラ松ってさ、凄く優しいでしょ?おそ松以外の弟達に弄られても絶対怒ったりしないし。…きっと彼女に対してもそうなんだろうなって」
「え…優しいのは駄目なのか?」
「駄目じゃないんだけど、こう、優しく甘やかしてくれるばかりじゃなくて、たまには厳しく叱られたり冷たくされるくらいがちょうどいいっていうか、ギャップにドキッとするというか…。上手く言えないんだけど」
「そ、そうだったのか…。…ななしも、そうなのか?」
「まあ、うん。そう、だね」
私はクールな男の人になじられるのが好きだからね、とそこまではカラ松に言う義理はないので言わないでおく。
カラ松は暫く何事か考え込むように黙っていたが、
「…わかった!じゃあ、今からななしに冷たく厳しい態度を演じてみせるから、ななしは俺を彼氏だと思ってジャッジしてくれ!」
「何故そんな結論に!?」
突っ込んだものの、カラ松の目はマジだ。いつも以上の眼力で見つめてくる。
…ええい、乗り掛かった船だ、最後まで付き合ってやろうじゃないか。