dream
□演技か、本性か
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私が承諾すると、何か台詞を指定してくれと言われたので、とりあえず最近見たドラマできゅんときた台詞を指定した。
「…いくぞ」
カラ松は目を閉じ、何度か深呼吸をする。
呼吸が整うと、そっと微かに目を開き、そして、
「…そんなことも出来ないのか、お前は。…とんだ愚図だな」
蔑むような目で私を見下ろしながら、普段よりも幾分低い声でそう吐き捨てた。
「〜〜!!」
「ど、どうだった…!?」
しかしすぐ様いつものカラ松に戻った。
私のジャッジを、不安と期待の入り混じった表情で尋ねてくる。
「……いや。いやいやいや。一回だけじゃ判断出来ないから。…もう一回。別の台詞で」
「わ、わかった!」
私はカラ松に、先程よりも難易度が高めの、別の台詞を指定した。
カラ松は目を細め、先程よりも幾らか愉しげな声で、
「…は、誰にでも股を開くんだなぁ?お前という女は。…この淫乱」
「ふあああああああ!!」
ガンガンガン!!
「ななし!?」
悶絶しながら足元にあったバケツで自らの頭を殴っているとカラ松が慌てて駆け寄って来た。
「ど、どうした!?大丈夫か!?」
「いやいやいや、ないから。私がカラ松にときめくとかないから…!」
「えっ?」
「ていうか一体演劇部のとき何役だったの、そんな実力で」
「え…確か主役も何度か演じたことはあるが…まぁ、そうじゃない時のほうが多かったと思うぞ」
今のは完全に、有名男性俳優並の演技だったような気がするけれども。
…カラ松が主役を演じられないほど、演劇部員の実力が皆、平均的に高かったということだろうか。
「…ねぇカラ松。今さっきのは、演技、だよね…?」
カラ松の返事を、不安と期待の入り混じる中、今度は私が訊ねるのだった。