dream
□熱に溺れる(カラ松Ver.)
1ページ/1ページ
「……37.8度か、結構高いな。何か欲しいものはないか?」
「ん……お茶飲みたい。冷蔵庫にあるやつ」
「OK、ハニー」
そう言うとカラ松は、鼻歌混じりに私の部屋から出て行った。
平日の昼下がり。昨夜から風邪を引いた私は今、恋人であるカラ松に看病してもらっていた。
移るかもしれないからと、最初はカラ松からの看病の申し出を断ったが、「フッ…例え移ったとしても、俺には怖いこと(困ること)などないからな」と言われたので、お言葉に甘えることにした。
正直、独り暮らしで体調を崩して家に籠っていると精神的にも滅入るので、カラ松が側にいてくれるのは有難かった。
部屋に戻ってきたカラ松は、お茶の入ったコップを机に置くと、ベッドから起き上がる私の身体を支えてくれる。……看病というより看護をされている気分だ。
「ありがとう、カラ松」
「フッ、このくらいなんてことないさ。それよりハニー、他にしてほしいことはないか?何でも言ってくれ」
目をキラキラさせながらカラ松が言う。
「うーん……あ、じゃあ、夕方になったらお粥作ってくれない?冷凍ごはんチンして、ひとつまみ塩入れてお鍋で茹でるだけだから」
「お粥だな!わかった!」
元気に返事をするカラ松は、まるで手伝いを頼まれた子供のようだ。
そんなカラ松に癒されながら、私はベッドから出る。
「ん?どうかしたのか?」
「ん……大学のレポートやらないと…」
「よし!じゃあ俺が」
「いや、さすがにこれはカラ松には頼めないから。それにカラ松のおかげでだいぶ良くなったし、大丈夫だよ」
本当はまだ少ししんどいが、無理してカラ松に笑顔を向ける。
が、カラ松の顔は曇ったままだ。上手く笑えてなかったのかもしれない。そしてカラ松は何かを考えるように、束の間黙り込む。そして、
「……なら、俺に移せばいい」
「え、」
どうやって、と言葉にするより早く、私の口はカラ松のそれで塞がれていた。
「……!」
開いた隙間から、カラ松の舌が滑り込む。口内の唾液を舐め取るかのように、ねっとりと口内を犯される。
「ん……ふっ…!」
いつもと違う執拗なキスに、息苦しさと恥ずかしさを覚えた私は、離してほしいという意味を込めて身じろぎをする。だけど逆効果だったらしい。カラ松は私を逃すまいと、腰に腕を回して身体を引き寄せ、反対の手で私の頭を固定した。
くちゅくちゅと響く水音、時折漏れるカラ松の色っぽい吐息に、耳まで犯されている気分になる。熱を移すどころか、体内の熱がどんどん上がっていく。
恥ずかしさも通り過ぎた頃、ようやく息苦しさから解放された。
「ん……はぁ、ななし……」
「はっ、あ……もう、馬鹿じゃないの、キスで風邪移すとか…」
風邪は確実にカラ松に移るだろうが、だからといって私の風邪が治るとは限らない。
だけどきっと、カラ松は本気で私の風邪を治す為にやったのだろう。私の代わりに風邪を引いてまで、私の風邪を治そうとしてくれた。彼はそういう人だ。
どこまでも純粋で、どこまでも馬鹿で。そして、どこまでも愛しい。
「……ななし」
未だ私を抱き寄せたままだったカラ松の腕に力が込もり、カラ松に抱き締められる形になる。
もっとだ、なんて耳元で掠れた声で強請れれば、断れるはずもなく。
再びその熱に溺れていくのだった。