dream

□依存する
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夢を見ていた。
大好きな人が、いなくなる夢。
否、寧ろその存在すら端からなかったかのような、そんな夢。



「なに泣いてんの」


不意に、大好きな声がすぐ側から聞こえてきた。
天井から声の聞こえたほうへと視線を移すと、同じ布団に横になっていた一松がこちらを見ていた。

「一松、」

その存在を確かめたくて、名前を呼んで、胸に縋り付く。確かに感じる温もりと、脈打つ鼓動、微かな体臭。
……ああ、良かった。夢じゃない。一松は確かに、ここにいる。


「怖い夢でも見たの」

「……うん。一松が、いなくなる夢」

私を振り払うこともせずじっとしていた一松の身体が、ぴくりと微かに動く。

「……泣くほどのことでもないでしょ、そんなの」

「泣くよ、そんなの。一松がいなくなったら、私…」


考えただけで涙が溢れてくる。
誰かのことをこんなに好きになったのは初めてで、想いが通じて、最初は幸せな気持ちで一杯だった。だけど時が経つに連れて、この幸せを失う怖さに気付いた。気まぐれな一松のことだから、いつ私から離れていってもおかしくはない。今が幸せであればある程、失う怖さも増していく。


「一松が、いなくなるのは、嫌。考えるだけで、苦しい。怖い」

「……っ」

思いを吐き出すと同時に、一松に強く抱き締められた。胸が圧迫されて少し苦しい。だけど、その苦しさすら幸せだと感じてしまう。一松を感じることが出来るから。温もりと共に、まるで一松も同じ気持ちでいてくれているかのような錯覚に陥る。



一松、好きだよ、大好き、愛してる。
だから、ねぇ。お願いだから、
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