dream
□初めての好意
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先日貰ったプレゼントのお礼を兼ねて、今日はカラ松を家に招いて手料理を振る舞うことになった。所謂家デートだ。
あわよくばこのまま既成事実を……と、誘った当初は考えていた訳が。最早それどころではないことを、今になって思い知った。
ここ数日間、デートを重ねる度にカラ松に魅了され続けてきた私は、こうして狭い部屋にカラ松と二人きりでいるという状況だけで、もうかなり緊張してしまっていた。
「このひじきもななしが作ったのか?」
私の緊張も梅雨知らず、テーブルを挟んで目の前に座り、既に箸を進めているカラ松が尋ねてきた。
「あっ、うん!……美味しくなかった?」
「いや、どれもうまいぞ。すごいな、ななしはいいお嫁さんになれるな!」
にぱっ、と満面の笑みを向けられ、一瞬息が止まった。
……こんなふうにカラ松に真っ直ぐに笑いかけてもらったのは、初めてかもしれない。ただのカラ松の笑顔なら、今までだって何度も見てきた。だけど、カッコつける訳でもなく、私に気を使う訳でもなく、こんなふうに純粋な好意を直接向けられたのは、初めてだ。
デートを重ねた甲斐があったのかもしれない。
もぐもぐとご飯を頬張るカラ松は、終始笑顔だ。きっと本人はかっこつけているつもりなのだろうけど、側から見たら好物を美味しそうに頬張る子供のようだ。可愛い。反面、箸の持ち方はまるでお手本のようにきれいだ。凛々しい。もうずっと眺めていたい。
「ななしは食べないのか?」
「……うん。カラ松が美味しそうに食べるところ見てるだけで、私は胸がいっぱいだから」
そう言った途端、カラ松から笑顔が消えた。
……今の発言はさすがにちょっと気持ち悪かっただろうか。
「あっ……えっと、その…」
「……ななし」
弁明を考えているとカラ松に名前を呼ばれた。カラ松は唐揚げを一つ箸で掴むと、
「ほら、あーん」
そう言って私に唐揚げを差し出した。
「え……、っ!」
急な出来事にぽかんとしていると、開いていた口に唐揚げを入れられた。私は反射的に口を閉じ、咀嚼する。
それを見たカラ松はいつものようにフッと笑い、
「ななし、ひとつ良いことを教えてやろう。ご飯というのは、一人で食べるより、誰かと一緒に食べるほうがおいしいんだ」
そして、そのまま唐揚げを一つ箸で掴み、食べた。
……今の流れは、間違いなく、完全に、
「…カラ、まつ……今……間接……」
「えっ?」
「だからその……箸……ご飯……一緒……」
「…ああ!一緒に食べたくなったんだな?」
「……。………………はい」
私の返事を聞いた途端破顔するカラ松に、私は更に魅了されていくのだった。