dream

□松野家六つ子との関係性
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「カラ松が好きすぎてつらい」


二階から居間へ降りて来たななしちゃんが、ちゃぶ台に突っ伏してそう呟いた。

「……え……なに、カラ松の看病しに来たんじゃないの?わざわざのろけに来たの?」

そう返すと、ななしちゃんはちゃぶ台に突っ伏したまま首を横に振った。

「看病はする。……だけどちょっと、今はちょっとだけ休ませて」

「いーっすよ!」

バランスボールに乗ったまま十四松が応える。

「いやいや、良くないから!兄弟の惚気話とか嫌過ぎてケツ毛燃えるわ!」

「まあまあチョロ松兄さん。ななしちゃんもちゃんと看病はしてくれるって言ってるんだし、ちょっとくらい大目に見てあげようよ」

そう言ってトッティはななしちゃんの隣に腰掛ける。
……前から思ってたけど、トッティはどうもななしちゃんに甘い気がする。いや、トッティだけじゃない。十四松は別として、十四松の側に座ってる一松もカラ松絡みだっていうのに何も言わないし、おそ松兄さんだってカラ松が風邪を引いたとわかった途端、真っ先にななしちゃんに電話をしていた。なんだかんだでみんなななしちゃんに優しい。



トッティは自分のスマホをななしちゃんに見せながら話を続ける。

「ななしちゃん、ほら、これあげるから頑張って!先週一週間のカラ松兄さんの写真、一枚百円」

「うん……ありがとう」

ななしちゃんは慣れた手つきでトッティにお金を渡し、トッティは「はい、じゃあ送るねー」とこれまた慣れた手つきでななしちゃんのスマホに画像を送る。

「いやいやいや、ちょっと待って!何その小慣れたやり取り!」

「えっ、何?」

「だからその澄んだ目をやめろ!」

トッティのキラッキラした目が、そのまま横へ逸らされた。
つられて同じ方を向くと、いつの間にか一松がななしちゃんの側に来てた。そしておもむろにパーカーのポケットから握り締めた何かを取り出して、ななしちゃんに差し出す。

「……これ、先週のクソ松の使用済みサングラス。二千円」

「ん、いつもありがとう」

ななしちゃんはトッティのときと同じようにお金を渡し、それを受け取った一松は「まいどあり」とにやりと笑ってななしちゃんにサングラスを手渡した。

「いや使用済みサングラスって何!?サングラスに使用済みとかないから!ていうかいつも!?お前らいつもそんなことやってたの!?」

「お、いたいたー」

一松達が答えるより先に襖が開いて、おそ松兄さんが居間に戻って来た。

「ななしちゃん、これ、カラ松が今さっき鼻かんだティッシュ。五千円」

「高っ!!」

僕が突っ込む隣で、ななしちゃんはごくりと喉を鳴らしておそ松兄さんの手のひらのゴミ屑をまじまじと見つめている。……嘘でしょ。え、嘘でしょななしちゃん?


「……さすがにそれは遠慮しとく」

「ええー!?なんで!?」

「いや当たり前だろ!そんなんお金出して貰ってたら人として失うもののほうが大きいわ!あのカラ松でさえドン引きだわ!」


おそ松兄さんに突っ込みを入れながらも、内心ホッとした。
……ていうか僕の知らない間に、みんなななしちゃんとそんな取り引きをしていたのか。どうりでみんなななしちゃんに優しい訳だ。ななしちゃんがカラ松にべた惚れしている限り、ななしちゃんはみんなにとっていいカモ……いや、大事な収入源なのだ。でも、そもそも、

「……ななしちゃんさ。別にみんなからわざわざお金出して貰わなくても、写真とかサングラスとかならカラ松に直接頼ればいいんじゃないの?前と違って今はもう付き合ってる訳だし」

僕なりの正論をななしちゃんに教えてあげると、ななしちゃんは顔を真っ赤にして首を横に振った。

「えっ……いや、か、カラ松とは付き合ってない、し……」


「「「「「え?」」」」」


ななしちゃんのまさかの返答に、みんなの声がハモった。
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