dream
□松野家六つ子との関係性
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「いやいや、付き合ってるでしょどう考えても。毎週会ってるんだし」
「で、でも、付き合おうとか言ってない……」
僕の問いにななしちゃんはもじもじと応える。……何その初々しい反応。ちょっと前までストーカーまがいのことしてた子とは思えないんですけど。
「え、なに、そういうのないと付き合ってることにならないの?俺よくわかんないんだけど。そうなのトド松?」
「うーん……まあ、女の子って結構そういうの気にするよね」
おそ松兄さんの問いにトッティが答える。
「でも、僕もてっきりもう付き合ってるのかと思ってたよ。ほら、なんかこの間からカラ松兄さん、ななしちゃんのことハニーって呼びだしたでしょ」
「あ〜、それ俺も思った!これ絶対何かあったなって思った」
「セクロスしたの!?」
「しっ、してない……!」
十四松の質問にぶんぶんと首を横に振るななしちゃん。
「じゃあどこまでいったの?」とおそ松兄さんが続け、その後も「A?B?C?」と次々と投げかけられる僕らの質問に、ななしちゃんはひたすら首を横に振り続ける。そして質問も尽きてきた頃、
「……でも、」
その間ずっと黙っていた一松が、最後に口を開いた。
「クソ松のほうは付き合ってるつもりでいると思うけど」
「「「「確かに」」」」
一松の言葉に、僕らも頷く。
カラ松だって僕らと同じクソ童貞だ。ななしちゃんがどう思っていようと、女の子と毎週会うほど仲良くなって付き合ってると思わないはずがない。……と、思う。
戸惑うななしちゃんに、トッティが両手をグーにして後押しする。
「ほら、みんなもこう言ってるんだし、ファイトだよななしちゃん!」
「ファイトー、オー!からのー、ハッスルハッスル!マッスルマッスル!」
ななしちゃんはみんなを見渡した後、意を決したように頷き、立ち上がる。
「……ありがとう、みんな。私、頑張るね…!」
スマホとカラ松のサングラスを鞄にしまうと、ななしちゃんは意気揚々と居間を出ていった。
「……ねぇ、ななしちゃんっていつからあんなだったっけ?」
ななしちゃんのいなくなった居間で、ふと頭に浮かんだ疑問を誰にでもなく投げかけた。
ななしちゃんが引っ越して来たばかりの頃、僕の記憶が正しければななしちゃんと一番仲が良かったのはトッティだ。だけどいつからだったか、まるで頭のネジが外れたかのように、ななしちゃんはカラ松のケツを追いかけ回すようになっていた。
「えっ……覚えてないの?」
僕の問いに応えたのは、意外にも一松だった。
「いや、覚えてるも何もそもそも知らないんだけど……一松は知ってるの?」
「知ってるも何も……」
「あー、そういえばあの日、チョロ松兄さんだけ家に居なかったんだっけ」
横からトッティが口を挟む。
「あの日って?」
「ななしちゃんがカラ松兄さんのストーカーと化した日」
「そんな日あったの!?」
「はいはいはいははいはーい!僕も知ってる!」
十四松がバランスボールの上でぼんぼん跳ねる。
「僕が一松兄さんでななしちゃんとぶつけたから、カラ松兄さんが家にいたんだよ!」
「せめてわかるように説明して十四松!ていうか何、僕以外みんな知ってるの!?」
この件に関してまだ言葉を発していないおそ松兄さんのほうを見る。
おそ松兄さんは「あ〜…」と気怠げにケツを掻いた後、ごそごそとどこからともなく一冊の本を取り出した。
「説明すんのめんどくさいから、これ読んで。これに大体書いてあるから」
「これって……」
おそ松兄さんから渡された本は、キラッキラと青いスパンコールのようなもので装飾されていた。表紙には筆ペンで『KARAMATSU DIARY』と書かれている。
「……からまつ、ダイアリー……カラ松の日記?」
いくら兄弟でも、勝手に読むのはまずいのではと、一瞬躊躇った。
だけど一度沸いた好奇心には勝てず、おそ松兄さんに促されるまま、僕は手に持ったそれを開いた。