dream
□溢れ出す気持ち
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ずっと手を繋いでいるなんて面倒なこと、おそ松はするはずがない。
チョロ松は、眠っている女の子の手なんてきっと握れない。
一松はたぶん、おそ松とチョロ松と同じ理由で握らない。
十四松はそんなに長い間じっとしていられないだろうし、トド松に至っては目を覚ましそうになった直前だけ手を握りそうだ。
「あの時私を介抱してくれたのが、他の誰でもない、カラ松だったからこそ、私は好きになった」
もしも他の誰かだったなら、好きになんてなっていなかった。
いや、下手をすれば目を覚ますこともなかったのではないかとさえ思う。カラ松の手の温もりが、私を意識の底から助け出してくれたように思う。
「……カラ松だからこそ、か」
チビ太はそう呟きながら、水のなくなったコップに水を注いでくれた。
「それで。今日のことで、お前はあいつを嫌いになったのか?」
「なってない」
コップの中で揺らめく水面を見つめながら、私は答える。
「さっきも言ったけど、カラ松は悪くないし……それに、もう、そんなに簡単に嫌いになんてなれない」
ただ遠くからカラ松を見ていただけの頃の私なら、まだ諦めがついたかもしれない。
だけど、今となってはもう遅い。カラ松の優しさや純粋さに直接触れて、どうして嫌いになんてなれるだろう。
「……好きなんだ。本当にもう、どうしようもないくらい。誰に何と言われようと……私は、カラ松を心から愛してる」
暫しの沈黙の後、チビ太は「そうか」と呟いた。その声は心なしか嬉しそうだった。
「ななし。……その台詞、そのまま後ろ振り返ってもういっぺん言ってやんな」
「……え」
チビ太の台詞に、どきり、と心臓が大きく脈打つ。
まさか、と思いながら恐るおそる背後を振り返ると、そこには。
「……っ!」
「あっ……」
顔を真っ赤にして立ち尽くす、カラ松の姿があった。