dream
□育った愛の行く末は
2ページ/2ページ
「マイスウィートハニーへ、このカラ松からの捧げものだ」
カラ松はおもむろに、ポケットから白い小さな箱を取り出した。そしてそのまま中身を私に見せるように箱を開く。
中には指輪が入っていた。独特なデザインで、中央には大きめのダイヤモンドがはめ込まれている。
「……これ、って、」
「本当はもっと早くに渡したかったんだが、色々と予想以上に時間がかかってしまってな……そのせいでななしを悲しませてしまったな、すまない」
『カラ松のほうは付き合っているつもりでいる』という六つ子の言葉を思い出す。
……今日、カラ松が私の誘いを断ったのは、もしかして、これを受け取る為に?
偶然会った演劇部の後輩に私の話をしていたのは、この指輪を受け取りに行く前だったから?
どくん、どくんと心臓が大きく高鳴る。そこにカラ松が追い討ちをかけるように不意に真剣な表情で私を見据えてくるものだから、心臓が爆発しそうになる。
極め付けにカラ松が一呼吸置いて口を開いた。
「ななし。俺を、養わないか?」
「…………ぇ……」
「カッコつかねぇなぁ」というチビ太の呆れたような独り言が聞こえてきた。
……チビ太の言う通り、それはお世辞にもカッコいいとは思えない台詞だ。歯の浮くような台詞ではなく、自信に満ちた笑みもない。今私の目の前にいるのは、いつものカラ松ではない。何も取り繕っていない、素のカラ松だ。
それに気付いた途端、胸が熱くなった。それはつまり、カラ松の正直な気持ちをそのままぶつけてくれているという証だ。
「…………はい。……喜んで」
震える声で、なんとかそれだけ絞り出した。
お金はどうしたのか、指輪のサイズは合ってるのか、色々聞きたいこともあるけれど、それ以上に嬉しさが溢れて仕方ない。今日はもう涙なんて出ないと思っていたのに。
「……よく泣くな、ハニーは」
そう言って笑いながら、カラ松は私の手を取り指輪をはめてくれた。指輪は私の左手の薬指に、ぴったりとはまった。
「ほら、前にも言っただろう?マイガール。嬉しいときはどうするんだ?」
カラ松は私の左手を握ったまま、反対の手で涙で濡れた私の頬を撫でる。
その声音と笑顔はどこまでも優しくて、それでいてどこか嬉しそうで。
つられて私も笑みが溢れた。
「…愛している、ななし。愛しい、マイスウィートハニー」
「……私も。愛してる、カラ松……大好き」
「っ!…………フッ……ああ、知っているさ」
そうしてカラ松は、少し照れたように微笑んだ。
溢れるほどの愛を、貴方に。
これからも、捧げ続けよう。
カラ松の手を握り返しながら、そう、心に誓った。
Fin.