dream

□演技でも本性でも
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そこでカラ松ははっと我に返ったように、慌てた様子で同じようにしゃがみ込んだ。

「ななし……?」

顔が熱い。私の顔を覗き込むカラ松の顔も、少し赤い。続けて、ごくり、とカラ松の喉が鳴るのが聞こえた。

「……馬鹿、変態、セクハラ、訴えてやる」

カラ松にそう文句を言ってみたものの、私自身そんなこと言える立場でもない。身体の熱さと、カラ松の私を見る目からして、きっと私も今、カラ松に負けないくらいいやらしい顔をしているに違いない。

「す、すまない……だが、うまく演じきれていただろう?この役は何故か、演じ易いというか……意識しなくても、自然な演技が出来るんだ」

「…それって……」

カラ松の本性に近いから、なのではないのか。
そう思ったけど、口には出さずに飲み込んだ。なんとなく、カラ松自身には自覚させないほうが良いように感じた。
それにもう、演技でも本性でも、どちらにしろ手遅れな気がした。思えば、今日は朝からカラ松のことで頭がいっぱいだった。……いや、よくよく思い返してみれば、カラ松の演技を初めて見たあの日から、既に私はカラ松に心奪われていたのかもしれない。

「……今日はそれ、わざわざ見せるために呼んだの?」

「ああ。……ななしが、喜んでくれると思ったから」


……ああ。こいつは、本当に。どれだけ人の心を乱せば気が済むのか。


「……なあ。続き、してもいいか?」

カラ松の言葉に心臓が跳ねる。
だって、ドラマではこの続きは、濃厚なキスシーンなのだ。

「いや、何言っ……み、みんなが帰ってきたら、」

「今日はみんな夕方まで帰って来ない」

カラ松がじりじりと距離を詰めてくる。カラ松の顔が目前に迫って、吐息すら感じられる。熱い。

「……嫌か?」

「っ!」

そんな吐息交じりに聞いてこないでほしい。ただでさえいい声なのに、そんな色っぽい声で、そんな熱に浮かされたような表情で、見つめてこないで。

「……嫌じゃない、けど、……っ!」

強引に唇を押し付けられ、私の言葉は途中で遮られた。
カラ松になじられても反論出来ない程、私の身体は歓喜に震えていた。
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