貴族と貴族

□におい
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朝日が眩しくて……アキは静かに目を覚ました

ここは…

ハッとしてアキは慌てて起き上がった
近くには温泉があり……

段々ハッキリしていく意識の中
あれから1日立っていることを察知した

「早く戻らないと行けないのだ!!」

目覚めてそうそう、アキは駆け出した

すぐに戻ると言っておいて
日付が変わってしまうなんて……

ヘリが見えてくる
周りには操縦士や、クローリー、クローリーの取り巻き2人、それから一般吸血鬼達がいた

「アキちゃん」

そんな中、一番にアキの姿を見つけたクローリーは大きな声で名前を呼んだ

「遅くなって申し訳なかったのだ」

アキの心の底からの謝罪

「うん。心配した。そろそろ探しに行こうか悩んでいたところだよ」
「ごめんなさいなのだ……」

フェリドとに吸血をされて、倒れていたなんて言い訳にもならない…
アキが申し訳無さそうにうつむくと
視界が…クローリーの身体により遮られる

何故か



クローリーに抱きしめられる形になっている

「僕もついていけば良かったね」
「いやいや、遅くなってしまった私が悪いのだよ!!本当に申し訳なかったのだよ」

申し訳なさでいっぱいのため
クローリーからの行為に抵抗せず
なすがままにされている

「ところで…」

せめてとの償いと思いジッとしていたアキに
先ほどまで、心配していたのとは違う
少し冷たいクローリーの声が降り注ぐ
アキもすぐ、その変化に気づき

恐る恐る顔を上げると

笑顔のクローリー

いや…まだ会って日も浅いがなんとなく
作り笑顔だということが伝わってくる

「君から…違う男のにおいがするのだけど、どういうことかなぁ?」
「………」

今まで大人しくしていたにも関わらず
思わずアキはクローリーの胸をドンと突き飛ばした


自分の身の安全をはかるため


会って数日
まだお互いのことをそんなにわかっていない状態で
何故他人のにおいが
アキのにおいの中に混ざっていることがわかる?
しかも男と…

クローリーの発言に間違いはないのだが

アキが拒絶反応を表したのはそこではない

クローリーを

一言で表すと

『変態』

だと言うことが、確定したからだ
フェリドのおかげというか
フェリドのせいというか
アキの変態への反応は凄まじい

そのセンサーが完全に反応したのだ

何故こうも
自分のまわりには、変態が集まるのだろうか…
小さく息を吐いてからアキはクローリーのことを完全に無視して
ヘリに乗り込む

「今から出発して名古屋市役所に向かうのだよ!!」

何事も無かったかのように
号令をかけると、吸血鬼たちはそそくさとヘリに乗り込んだ

クローリーだけが

その場にとどまる

「何をしているのだ。行くのだよ!クローリー・ユースフォード」

あくまで、何もなかった程を貫き通そうとするアキ
しかし
クローリーもそれで納得するはずもなく

「僕の質問に答えてくれていないんだけど。どういう事?僕たちを待たせて、君はいったいどこで何をしていたの?」
「何故話さなければいけないのだ。私は少し用事をして来ただけなのだよ」
「その用事ってさ………」

クローリーが

次の言葉を繋ぐ前にしばしの間があった
言おうか言わないか悩んでいる様子だ

けれどそんなクローリーも決心をしたのか
小さく頷くと

「その用事ってフェリド君に会うこと??」
「…………ぇ」

クローリーの直球に当てられたアキは
唖然としてクローリーを見つめるのだった



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