好きは止まらない

□芽生エ
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親の顔なんて知らない
家族もいない

ただ彼女は幼少期に日本帝鬼軍に拾われ育てられ
月鬼ノ組の軍人として育てあげられた
黒鬼シリーズの鬼呪装備の使い手の彼女は
いつものように戦場へ赴いていた

「亜紀…行くよ」
「了解!全力で深夜のこと守るよ!」
「ほんと…亜紀がいると心強いよ」

そう言って深夜はニコリと笑い時計を見つめ持ち場についた
その横で亜紀が鬼呪装備"玄天上帝"を構える
亜紀の鬼呪装備は戦闘型ではなく

盾タイプ

その為、戦闘要員の防御役を担うことがほとんどなのだ

「さぁ…始まるよ」

と言うと、深夜がカウンドダウンを始める

本日の目的は

最近この辺りを行き来している吸血鬼の貴族に威嚇をする
というものだ

まだ力が計り知れない吸血鬼の貴族を倒すことは難しいだろう
そのため、倒すのではなくあくまで

威嚇

だけなのだ

そして時は満ちた

日本帝鬼軍が待ち構える射程距離圏内に吸血鬼の貴族が現れたのだ

「いけ…白虎丸」

深夜が第一撃を発射した
白虎丸の速さ、威力は凄まじいもの
一瞬にして白虎丸が貴族をとらえ粉塵が舞ったように思えたが…
貴族は優に避けていた
そして

「深夜!危ない!!」

白虎丸よりも速く、そして強い威力で貴族から放たれた一撃がこちらに向かってくる

「玄天上帝!」

亜紀が叫ぶと、2人を五角形の盾が光り、敵の攻撃を防ぐ
しかし防いだかと思うと…
目の前まで貴族が迫っていた

「速い…深夜!逃げて!!」
「亜紀何を言ってるんだ?!?!」

迫ってくる貴族のさらなる攻撃を受ける亜紀

「君…女の子?」

近づいてきた貴族が問う
必死の亜紀や深夜たちと違い余裕のある貴族

「だったらなんだ?!お前に関係無い!」
「僕の攻撃を退くほどの盾…それいいね。欲しいよ。」

そう貴族が言った瞬間
玄天上帝は弾かれ亜紀の手から離れてしまった
そして首を捕まえられ床に押し付けられる

「…顔も悪くない。僕の家畜になりなよ」
「なっ?!?!///」

反論しようと思ったが貴族により首を絞められ何も言えない
そして少しずつ意識が…
そう思っていると遠くで

キンっ

と何かがぶつかる音がしたとおもったら
貴族の手が離れ、身体が宙に浮いた
そして近くの壁に叩きつけられる

「ゲボッ………ケホッ……」

貴族の手から解放された亜紀の意識がはっきりしてくる

どうやら深夜が貴族に一撃を喰らわした反動で亜紀は解放されたらしい

そして深夜と貴族の攻防を見つめる
貴族は赤い髪の毛に三つ編みを施している
そして深夜と戦っているにも関わらず口元には笑みを浮かべ余裕の表情
そしてチラッと亜紀を見ると微笑みかけてきた

ドキンッ……

その微笑みを見て亜紀の心臓が高鳴る

これは…

強者への恐怖なのか
それとも別の何かなのか…

この時の亜紀は置かれている状況により自分の感情を理解することが出来なかった





あの後、深夜は貴族と戦い負傷しながらも亜紀を抱え月鬼ノ組の基地へと戻ることができた

そして亜紀も深夜も今は医務室で横になっている

「亜紀が…無事で良かったよ」
「ごめんね。私のせいで深夜に怪我させちゃって」
「これくらい大丈夫だよ。亜紀を助けられて良かった」
「深夜。ありがとう!」

亜紀は深夜を見て笑った

「………///」

それを見て深夜は静かにそっぽを向くのだ

そんな深夜の様子に気づくこともなく、亜紀は目線を天井に向け
そしてあの日の事を思い出す

吸血鬼特有の白い肌に赤い瞳

その赤い瞳と同じく赤い髪の毛に三つ編み
整った顔立ちに
少ししっかりとした体格

ドキンッ……

亜紀の心臓が高鳴った
戦闘中にも感じた高鳴り

これは何だろう

恐怖とは違う何か……

「ちょっと私…出てくる」

この高鳴りの正体を知りたくて
ジッとしていられなくなり、亜紀は起き上がった

「え?!でもまだ、許可が?!?!」
「大丈夫!医務室の先生が来るまでに帰ってくるから!深夜が黙っててくれたら問題ないよ!」
「え?!でも!ちょっと…っ…」

深夜が言い終わるか言い終わらないかぐらいで、亜紀はベットからおりて医務室を出て行った

行かせてはいけない

そう深夜は思った
何故かはわからないが嫌な予感がした
医務室から出て行こうとする亜紀の背中が遠くに見える

手の届かないほど遠くに…

追いかけようとも思ったが、身体が痛みで言うことをきかない…

「くそっ…………っ………」

深夜の心をモヤモヤした気持ちが支配する
なんとも言えない感情が沸き起こり
亜紀の出て行った扉を見ていることも出来ず…

深夜は静かに天井を仰いだ


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