終わりのセラフ短編

□☆本当は
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一目見て

恋に落ちるという事はこういうことなのだろうか

私は吸血鬼の貴族であるクローリー様の拠点である名古屋市役所に
鎖で繋がれていた

ただの人間である私がクローリー様と共にある為にはこうする他無かった

愛しているクローリー様と共にいれるならば…

「クローリー様…私の血を吸ってください」

けれど、それは実ることのない恋心

私の言葉に無言で答え、近づいてくるクローリー様

鎖で繋がれる私の元に来て首筋に牙をさす

「もっと…もっと………もっと吸って下さい。クローリー様」

私の全てを、貴方に捧げます

いっその事、殺してくれても構わない

だって

私たちは結ばれることなどないから

だったら、いっそのことクローリー様の手で死にたい
私の永遠の死をクローリー様に捧げたい

こんなことを考えるのはおかしいのかな

けれど
それほどまで、愛しています

「クローリー様……私の血は美味しいですか?」

何も答えない

それはいつものこと

鎖で繋がれてから一度も言葉を交わしていない

鎖に繋がれる前は、関係性があったのかと問われると…
ほぼなかったが、ただの一家畜として会っていた時には一言二言会話があった

けれど

私がクローリー様専属の家畜となることを志願した
そして、自分から鎖で繋いで欲しいと懇願した
自分に枷をはめる事で、クローリー様にとっても枷になれば良いと思ったから

そんな私の考えを見通しているのか

その日以来、クローリー様は血を吸っては下さるが私に声をかけることはなくなった
私から声をかけても返答もない

私…

何か間違っていたのかなぁ

クローリー様と共にある為なら………

そう思っただけなのに

こんな思考回路を持つ私は狂っているのかなぁ

「クローリー様?」

暫くすると、クローリー様の牙は離れていった
いつもより飲んだ血の量が少ないと感じる

何で?

そしてあろうことか、クローリー様は

私を繋ぐ鎖を…

外した

「なんで……」
「好きなところに行っていいよ。」

久々に聞いたクローリー様の言葉は残酷な言葉だった

貴方と共にありたいがための提案
現状だったのに、それを全て解き放った
それは物質的な鎖も
私とクローリー様を繋ぐ鎖も……

「何で………」
「君は…僕の知っている亜紀じゃない」

え……

クローリー様が、私の名前を呼んだ
何で家畜の私なんかの名前を知っているのだろう

「そうしてしまったのが僕なら責任は全て僕にある。だから君を自由にする」
「言っている意味がわからない。私の血が不味いですか?!?!それとも、量が少ないですか?!?!あなたが望むなら私が死んでしまうまで血を飲んで頂いても構いません!!」
「……」
「早く!私の全て貴方に捧げます!ですから、早く!早く私の血をお飲みください!!」
「すまない」

何故…

謝罪?

私ではなく

何故クローリー様が謝ったのかわからない

なんで

私のどこが行けなかったの?

私はクローリー様を傷つけるようなことをしてしまったの?

そうか

クローリー様は私のせいで傷ついてしまわれたんだ

家畜の分際で、主人であるクローリー様を傷つけてしまうなんて

なんて

愚かで

恐ろしいことを私は…

どうすれば私の罪は消えるのでしょうか…

そうだ。これしかないわ

ガチ………

「亜紀?!一体何を?!」

舌から流れ出す血でうまく言葉が発せられない

「クローリー様に見限られて、さらにご迷惑までおかけしたのですもの。これが家畜の役目です」
「何で……そんなつもりで、言ったんじゃないんだけど」

どういうこと

「何で、家畜の君を僕の拠点に連れてきたと思うんだ?!申し出があったところで、君じゃなければ連れてきたりはしない」
「え………」
「君だから連れてきた!なのにこんな事になるなんて……」

おかしいな

これってつまり

「僕は亜紀のことが好きだからここに連れてきたんだ」

そんなことって……

叶わない恋だと諦めていた

だからせめて

家畜として、クローリー様の近くにいたい
人間扱いなんてされなくていい
ただ
ただクローリー様のそばにいさせて欲しい

そう

願っていた私の思いは………

間違っていたの?

クローリー様は私のことを…

そんなことってあり得るの?

「亜紀!死ぬな!!」

舌からの出血で倒れそうになる私の身体は
クローリー様によって抱えられ

そして

私の唇とクローリー様の唇が重なり

そこから

温かい何かが流れ込んでくる

そして心臓が激しく波打った

「ごめんね亜紀…けど、君を失いたくは無いんだ。これからは僕と一緒に吸血鬼として生きていこう」

あぁクローリー様

私は幸せです



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