空色スパイラル

□第四訓 第一印象がいい奴にロクな奴はいない
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「おかわりヨロシ?」


お茶碗を突き出す神楽に、お登勢は叫ぶ。


「てめっ、何杯目だと思ってんだ。
ウチは定食屋じゃねーんだっつーの。
ここは酒と健全なエロをたしなむ店…親父の聖地スナックなんだよ。
そんなに飯食いてーなら、ファミレス行ってお子様ランチでも頼みな!!」


「ちゃらついたオカズに興味ない。
たくあんでヨロシ」


「食う割りには嗜好が地味だな、オイ」


お登勢はテーブル席でパフェを食べている銀時達に標的を変える。


「ちょっとォ!! 銀時!愛!!
何だい、この娘!!
もう、5合も飯食べてるよ!!
どこの娘だい!!」


三人はげっそりした表情を浮かべる。


「5合か…。
まだまだ、これからですね」


「もう、ウチには砂糖と塩しかねーもんな」


『お腹と背中がぴったんこ〜。
あはははは』


愛に至っては、変な鼻歌を歌い出す始末。


「なんなんだいアイツら、あんなに憔悴しちまって…ん?」


お登勢が横に顔を向けると、神楽が炊飯器ごとご飯を掻き込んでいる。


「って、オイぃぃぃ!!
まだ食うんかいィィ!!
ちょっと 誰か止めてェェェ!!」





「へぇ〜。
じゃあ、あの娘も出稼ぎで地球[ここ]に。
金欠で故郷に帰れなくなったところを、アンタが預かったわけ…。

バカだねぇ。アンタも家賃もロクに払えない身分のクセに、あんな大食いどうすんだい?
言っとくけど家賃はまけねぇよ」


『家賃なら私が頑張るから…。
あんなかわいい子、見捨てれないっすよ!』


「愛…アンタ無理するんじゃないよ。
この天パになんとかさせるから」


「オレだって好きで置いてる訳じゃねぇよ。
あんな胃拡張娘」


言い終わった瞬間、神楽の飲んでいたグラスが銀時の横顔にヒットする。


「なんか言ったアルか?」


『「「言ってません」」』


銀時の様子を見ていた三人は何も言えない。
すると、銀時にハンカチが差し出された。


「アノ 大丈夫デスカ?」


その正体は猫耳の生えた女だった。


「コレデ頭冷ヤストイイデスヨ。」


その顔を見た銀時は呟く。


「あら?初めて見る顔だな。
新入り?」


『確かに、ネコミミなんて初めて見たっす…。
本物っすか?』


二人の言葉に猫耳さんは答える。


「本物デスヨ。
今週カラ働カセテイタダイテマス、キャサリン言イマス」


お登勢が猫耳さんことキャサリンを紹介する。


「キャサリンも出稼ぎで地球[ここ]に来たクチでねェ。
実家に仕送りするため頑張ってんだ」


それを聞いて銀時は言う。


「たいしたもんだ。
どっかの誰かなんて己の食欲を満たすためだけに…」


銀時が言い終わらないうちに、またグラスがヒットする。


「なんか言ったアルか?」


『「「「言ってません」」」』


すると、入り口の戸が開く。


「すんませーん」


入って来たのは二人の役人。


「あの、こーゆもんなんだけど。
ちょっと捜査に協力してもらえない?」


役人の言葉に新八が聞く。


「なんかあったんですか?」


「うん ちょっとね。
このへんでさァ、店の売り上げ持ち逃げされる事件が多発しててね。

なんでも犯人は不法入国してきた天人らしいんだが、この辺はそーゆー労働者、多いだろ。
なんか知らない?」


役人の言葉に銀時はすぐさま神楽を指差す。


「知ってますよ。
犯人はコイツです」


すると、神楽は銀時の指を折る。


「おまっ…お前。
何さらしてくれとんじゃァァ!!」


「下らない冗談嫌いネ。」


『さっきのは銀時も悪いよ
人に指差したらダメって習ったじゃん!』


「愛ちゃんまで!!
てめェ故郷に帰りたいって言ってただろーが!!
この際、強制送還でもいいだろ!!」


銀時の言葉に神楽はハッキリ言う。


「そんな不名誉な帰国、御免こうむるネ。
いざとなれば船にしがみついて帰る。
こっち来る時も成功した、なんとかなるネ」


「不名誉どころか、お前ただの犯罪者じゃねーか」


『神楽、すごいっす!かっこいい!』


「愛ほどじゃないアル」


そんな三人の様子を見ていた役人は、安心した様子で店を去ろうとする。
その時、店の玄関先からエンジン音が鳴り響いた。

そこには銀時のスクーターに跨ったキャサリンが、店の売上を括り付けて走りだすところだった。
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