空色スパイラル

□第十訓 疲れた時は酸っぱいものを
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《え〜、続いてのニュースです。
先日、来日した央国星のハタ皇子ですが、新設された大江戸動物園を訪れ−》


ニュースに映っているのはハタ皇子だった。


「銀さん、愛さん。
あの動物好きのバカ皇子、またこっちにきてたんスね。
ってちょっと…銀さん。きいてます?」


ジャンプを顔に乗せて、ソファーに寝ている銀時。
愛は呆れた表情で毛布をかける。


『銀時、こんなとこで寝てたら、カゼひくっすよ』


しかし、銀時はいびきをかきながら、一向に起きる気配はない。


「ただいまヨ〜」


「あ、おかえり」


『……神楽?ん?』


買い出しから帰ってきた神楽。
その後ろに大きな影を見つけ、愛は必死に目をこする。


「トイレットペーパー、買ってきてくれた?」


何も気づいていない新八は神楽に尋ねる。
すると、神楽はトイレットペーパーを1ロールだけ、新八の手に乗せる。


「はいヨ」


「…神楽ちゃん。あのさァ…普通、何ロールか入った奴買ってくるんじゃないの?
これじゃあ、誰かおなか壊したら対応しきれないよ」


「便所紙くらいでガタガタうるさいアル。
姑か お前!
世の中には新聞紙をトイレットペーパーと呼んで暮らす貧しい侍だっているアル」


神楽の言葉で目覚めた銀時は、不自然な愛を見る。
視線の先に目を移すと、大きな犬がいた。


「そんな過激派いないよ。誰にきいたの?」


「銀ちゃんが言ってたヨ」


「ダメだよ。あの人の言う事信じちゃ。
ねぇ、愛さ…ん?」


愛と銀時の様子に気づいた新八は、同じ様に視線を移す。


「ぎゃああああああああ、なにコレェェェェ!!」


新八の目の前には巨大な白い犬。


「表に落ちてたアル。カワイイでしょ?
ねぇ、愛」


「落ちてたじゃねーよ。
それに愛は犬が嫌…」


『か…可愛いい』


「えっ!?」


『可愛いっす!!さわっていい?
わぁ!フワフワしてる。
あーっ!目もクリクリしてる』


「えっ…愛ちゃん?
犬嫌いじゃ…。
ってか神楽、お前拾ってくんならせめて名称のわかるもん、拾ってこいや」


「定春」


「今つけたろ!明らかに今つけたろ!!」


神楽は紙を取り出し、新八に渡す。


「これ…首輪に挟まってたヨ」


「えーと…万事屋さんへ。
申し訳ありませんが、ウチのペットもらってください」


銀時は眉を寄せる。


「……それだけか?」


「(笑)と書いてあります」


「笑えるかァァァァァァ!!(怒)」


銀時はビリビリに紙を破った。


「要するに捨ててっただけじゃねーか!!
万事屋つったってなァ。
ボランティアじゃねーんだよ!!
捨ててこい!!」


銀時が冷たく言い放つ。


「嫌アル!!
こんな寒空の下 放っぽいたら死んでしまうヨ!!」


『銀時、私からも頼むよ。
神楽が言うみたいに死んじゃったら…』


神楽と愛の必死の懇願など、銀時は気にしない。


「大丈夫だよ、オメー。
定春なら一人でもやっていけるさ。
愛は定春を信じてやれないのか…?」


「アンタ、定春の何を知ってんの!?」


新八の鋭いツッコミを無視し、銀時は愛を説得する。


『でも…』


「愛 これは親としての責任だ…。
時には、鬼にならなきゃならない事もある。
わかってくれるよな、定は…」


銀時の言葉は途切れた。
なぜなら、銀時の頭を定春が丸かじりしたからだ。
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