世界一妹

□White Angel
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《一松視点》








ヒラヒラと風に靡く白いワンピース。




その裾から覗く白く細い脚。




脚の前では、道を示す白い杖が左右に振れている。






「……今日は真っ白だね、菘」






歩く真珠のような妹にそう訊ねれば、彼女は「え?」と首を傾げた。



まぁワンピースは置いといて、肌が白いのは普段からだし白杖も毎日使っているから全部白と言われても盲目の菘にはピンと来ないのかもしれない。






「あ、服のこと?そっか、真っ白だったね」





ニヘラと笑い弧を描く唇、そして薄く化粧をした頬は桃色だ。



黒髪の艶が天にさらされ天使の輪のように輝いている。



髪の色は自分と同じ。



そっと撫でて毛先まで手櫛で梳いてやると、自分には無い絹のようなやわらかな感触がたまらなく気持ち良かった。








「……菘って、本当に人間?」





「えっ、何それ」






歩みを止めずに喋りながらも、菘が不本意そうな顔をする。




「いや……限りなく天使に近い何かなのかなと」



「違うよ。普通の人間だよ」




兄ちゃん達と同じ、と付け足した菘がおかしそうに笑う。



笑われたことの気恥ずかしさに、仕返しとばかりに繋いだ手ごと自分のパーカーのポケットに手を突っ込んでやった。





「一松兄ちゃ、……」






そこではたと菘が立ち止まった。





「菘、どうし………」






何気なく振り返った先を見て、俺の動きも止まった。








……あいつら、また尾行してきてやがる。







そこにいたのは我が兄弟であり何かと邪魔をしてくる敵5人。


しょうもない変装をして影からこちらを覗いていた。


菘には声でも聴こえていたのだろうか。相変わらず菘の聴覚には恐れ入る。



だが今は菘とラブラブデート(散歩)中……この貴重な時間を奪われてたまるものか。





「……菘、撒くよ」




「え?」





しかし撒くと言っても、菘に走らせて怪我などさせたら俺は切腹レベルの罪に苛まれるだろう。



路地を駆け抜けるシーンなんてドラマチック…と一瞬思ったが、ダメだ。危ないことはさせられない。




ここは小道を使って奴らの視界から外れるしかないか…。



繋いだ手をポケットから出し、気持ち早歩きで道の端を歩き出した。



チラリと後ろに目を配ると、奴らも一定の間隔を空けてついてきている。



この距離ならイケる。





「右」




繋いだ手をクイと引いて合図を出し、二人で狭い路地に入っていく。





「左」





足元にも気をつけながら、段差がある時は一度立ち止まり菘を導いていく。





そうして右へ左へ建物の間を抜けて、少し広めの通りに出た。


通行人も多数いる。この辺りでどこか店にでも入るか。





「菘、…カフェとショップどっちがいい」



「…カフェ!」




笑顔が眩しい。





「……なんか楽しそうだね、菘」



「うん、楽しい!


 冒険してるみたい!」




キラキラした菘スマイルを向けられて内心ドキッとしながらも、入りやすいカフェに目をつけて再び菘の誘導に移る。


あまり立ち話していると奴らが追いついてしまう。




菘の手を引いて歩き出したその時。








「サイッッテー!!」








近くで女のヒステリックな声が聴こえたと思ったら、




ドンッ



「うわっ…!!」




「……っ!!」




強い衝撃と共に繋いでいた手が離れてしまった。






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