distant

□please be aware
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「チョコレート?」


さっきから、まいがスマホにかじりつくみたいになってるのが気になって、背後から覗いてみたら....

やたらピンクな通販のサイトっぽい画面


「ん〜...バレンタインのチョコレート...」


いつもは画面見たら怒るくせに、こっちに見向きもしない

「僕、これ好きかな。」

一番デコレーションが派手で、普段なら絶対選ばないようなのを指さす


「男の子でも、こんなに甘そーなの好きかな?」


いや、世間一般じゃないよ
てか、好きじゃないし


「僕が好きなの。」


「そうかなぁ。こっちの方が...」




画面に触れそうになったまいの指を右手で覆って、背後から抱きしめるようにして、耳のそばで囁く


「僕が好きなのはって言ったでしょ?」


まいの柔らかい頬っぺたが、だんだん熱くなってくる


「聞こえた?」


こくんと頷く

前髪が頬に触れる



「ジニョンにはこれにするね。」

小さな声


「僕のだけね。」

「え?」

「買うのは僕のだけ。」



全部分かったみたいに、肩をすくめて笑うまい



「そうする。」


本当は抱き締めたくて、頬っぺたにキスしたくて、愛してるよと言いたくて心が痛い


「ほら、衣装がしわになっちゃうよ。」

また、全部分かったみたいに気遣ってくれるまいの手を、そっと握る






廊下に並ぶいくつもの楽屋のドア


どこかにいつも隠れて逢う僕たち


手のなかにある温もりが、小さな幸せを教えてくれる



「ね、やっぱり.....」


あんまり甘くないのにしてと言いかけて


「キスしていい?」


本音が洩れた




だって


可愛すぎるよ、まい









fin
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