distant
□thanks
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「ほらあ、やっぱりなんか足りない....塩?」
言っちゃいけないと思いながらも、言っちゃう
『ごめん』となって、咄嗟に出たのが『塩?』で、これが余計にまいを怒らせるんだけど....
いつも怒らせてから気がつく
「ごめん。」
俯いて食べながら、呟くようにまいが言った
あれ....?ここはいつもと違う
ちくちく言われる前に食べちゃおうとしたのに、あれ?
「まい〜?まいちゃ〜ん?」
テーブルの下、爪先でまいの膝をトントンとつつく
「うん、食べられなくもないかな。ほら、ごふっ....」
喋りながら頬張ったもんだから、噎せて口から出たご飯粒がテーブルに散らばる
ヤバい....これは怒られる...
身構えたのに、反応なし
「まい、ごめん...ね?」
ギャグとか言った方がいいケース?それとも後ろから抱きしめてうやむやにしちゃった方がいいケース?
「私、もう無理かも....」
「へ?」
僕の相手することが?2人でいることが?そんなに深刻?
まさかそれは....考えすぎなのか?....いや、今まで深刻になるほど突っ込みすぎてたかもしれないけれど....
「無理って...なにが....?」
「タイ料理!私の舌じゃこれで満足になっちゃうんだもん。
ベムが作ってくれれば良いんじゃん!」
バタンッと椅子を倒しながら立ち上がって、食器棚の引き出しから料理本を引っ張り出すまい
散らばったご飯粒を拾いながら、数秒の間に焦りまくった心を落ち着かせる
良かった....ほんっとーに良かった
はい、作ります 僕が作ります
だから
その隣の引き出し開けないでね
来週の誕生日に見つけてもらうはずのプレゼントが....
また焦り出した心を隠そうと、まいを後ろからぎゅっと抱きしめる
「いっぱい勉強してくれてたんだね、ありがと。」
足下に散らばった本から出てるたくさんの付箋
たぶんきっと、そのうちまいの味に慣れちゃうんだろうな
それくらい、一緒にいようか?
fin