短編
□Mayor Que Yo
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流石にこう言えばこの人も引くだろ。興味本意だから。断られたらそれまで。断られなかったらどうしようか。
「分かった」
理解したのかな?本当に?でも分かんないもんだよね。断れるよね。
「じゃあ、付き合おう!私、みょーじ名無し。よろしくね。」
嬉しそうにウィンクをして片手を差し伸べられた。
戸惑いながらも僕も手を差し伸ばして、その大人っぽくも僕より小さい手を握った。
「松野、一松です……。」
そしてトークアプリの連絡先を交換して、会う度に本当に何かしらくれた。
ある日はおかし、ある日はまくどの株主優待券(貰い物らしいけど)、ドクペを奢ってくれたり、いろいろ。
最初は好きだから付き合ったわけじゃない。次第にこの人は何かくれるから一緒に居た。安心もくれる。
「名無しさん、なんのお仕事してるの?」
「営業といろいろかな」
と。大変なんだな。実際会う時間とか曜日は決まってない。でもいろんな所に連れていってくれる。
「どうしたの?一松君」
優しく頭を撫でてくる。
そして彼女の首元にすがりつくように近付く。
「一松君は甘えただねー」
いつも甘やかしてくれる。
五人の兄弟と居ると、滅多にこういうことはない。それも当たり前だけどね。前に兄さんに褒められたけど、それとは違う。
「一松君は可愛いね」
「男に可愛いとか……」
悪態をついても、愚痴っても、落ち込んでも側に居てくれた。
でも好きとかはなかった。安心できる場所を提供してくれて、何かしらくれるから。だから一緒に居る。
「一松君、好きだよ」
「ん」
優しい手つきで撫でてくる。
甘い匂いが鼻に、僕の中を充満していく。
甘やかしてくれるから甘えていた。
でも、好きとかじゃない。年上に甘えて、何かしらを期待して、全てもらってばかりだった。
この光景はなんなの。おかしくない?