短編

□Mayor Que Yo
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 最初は本当に好きだから一緒に居たわけじゃない。年上の安心感。兄弟は皆年が一緒だし。上とか下とかあるけど。でも彼女は甘やかしてくれて、安心できて、甘えられて。

「あ」

 そうか。今更気付いてしまった。
チョロ松兄さんに嫉妬しているのか。
なんでって、好きになってたのか。今離れてても、いつか帰られると思っていたんだ。

 思い出すいろいろな出来事。
もう戻れない。遅すぎた。
久々にトークアプリを開いて、最後の会話を見て自分を殴りたくなった。

「ごめん。嘘。好きだよ。大好き。チョロ松兄さんなんてやめて俺の所に戻りなよ」

 勢いで送ってスマホを床に置いて遠くに飛ばした。
戻れるわけないんだよ。僕が捨てたのに。

「年上の果実は刺激的過ぎた」

くそみたいな呟きをして、床に横になった。ああ、寂しい。

 兄弟達がぞろぞろと部屋に集まってきて、僕を見てぎょっとしてた。
そうか、夕飯か。

「なんか最近の一松兄さんなんか元気なくない?」

「性欲がなくなったんすかね!?AVとか必要っすか!?」

「いや、いらないと思うよ、十四松。一松は自業自得だから」

チョロ松兄さんの声にビクッと体が反応して、飛び上がった。

「チョロ松なんかしたの?一松すっげぇ睨んでるけど」

「ブラザー達の争いは悲しいぞ……」

「うるせぇ、クソ松」

「すみません……」

 チョロ松兄さんはきっとどこか行くのか、大きい荷物を抱えて壁に座って、荷物を大切そうに置いた。

「なあ、チョロ松本当に今日どっか泊まるのか?」

「うん」

 黒い何かが沸き上がってくる。
今更過ぎる。こっちは一度も行った事ないのに。

「チョロ松兄さん激しそうっすねー!背中に猫に引っ掛かれた線がありましよー!」

 十四松が興奮気味に言うと、チョロ松兄さんが赤面して咳き込んだ。

「見てたのかよ!?」

「ガラスに映ってたんすよー!!」

すごく楽しそうに言う。なにそれ。なにそれ。なにそれ。そっちはどんなプレイしてるの。気分悪くなる。

「で、でっかい猫に引っ掛かれた……」

それ嘘でしょ。視線泳いでるよ。
チョロ松兄さん以外が机を囲んで、チョロ松兄さんと話をしてた。
皆何を聞き出したいか分かっているけど、あえて言わせようとしていた。

なんだよこれ。自業自得って上から目線かよ。
チョロ松兄さんと目があった。その目は冷たくて勝ち誇っていた。

END
2016.2/15
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