落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第拾壱幕* 八つ当たり
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『銀時お兄ちゃんがいないと寂しいもん!
銀時お兄ちゃんに会いに来たんだよ』


ニヤッと笑みを浮かべる銀時。


(今日の悠凜も可愛かったなぁ〜)


ゲシッ


「痛ってぇ?!高杉、何しやがる?!」


高杉が銀時を蹴っていた。


「あァ?気持ち悪ぃんだよ。
さっきからニヤニヤニヤニヤしやがって」


「う?!べ、別にニヤニヤなんてしてねぇだろ。
てめぇに関係ねぇし」


「悠凜と仲直りできて良かったなァ」


「な?!なななな?!」


ニヤッとした笑みを浮かべる高杉と赤面し、
口をパクパクとする銀時。


「おま、おま?!…なんで…」


「見てたからな、桂も一緒に。
キスくらいすりゃいいのに、俺だったらしてっけどなァ」


(?!…)


銀時は拳を握り、俯く。


(なんだァ?急に俯きやがって…、まさか…泣いて…?…)


銀時の顔を窺おうとした瞬間。


ブンッ


「ぉあ!?」


銀時は高杉に向かって刀を振るっていた。


顔を上げた銀時の目は据わった状態だった。


「お、お前…急に、刀振る奴があるか?!」


「ああ?煩ぇよ。別に刀身が出てるわけじゃねぇ、鞘に入ってんだ。
死にゃしねぇ…」


「は…?お前、そんな理屈…」


ブンッ


またも振るってくる刀。


「危ねェ!?死なねェかもしれねェが、痛ェだろが!!」


高杉も竹刀で応戦する。


バシンッ


激しくぶつかる竹刀と鞘。


「ふざけんなよ…天パァ」


「あぁ?!てめェ、俺の気にしてる事次々と…」


「知るかよ!」


パーン


「てめェ、そんなに、あのチビが好きなのかよ」


「てめぇには関係ぇねぇ」


バン


「だったら、俺に剣を振るうな!」


「てめぇは、気に食わねぇんだよ。
悠凜に抱きつかれてニヤつきやがって?!」


(な?!)


パシーン


高杉の竹刀が飛ばされる。


(ヤベッ?!)


ガツンッ、ドン、ガラガシャーン


(痛ッ?!…)


銀時の鞘が高杉の顎に命中し、吹き飛ばされる。


「コノヤロー…」


ドスンッ


銀時は間髪入れず、起き上がろうとした高杉の身体の上に乗っかる。


「悠凜にキスだぁ?」


シャラーン…


(え…?…おい…、刀…抜き…)


「してみろよ…」


銀時は鞘から刀を抜いて、振り上げる。


(こいつ、やべェ…。ヤラれ…)


腕で防御する高杉。


ドスッ…パラパラ…


(……?…痛くねェ…)


ゆっくり腕の間から銀時を窺う。


「本気でヤっちまうぞ」


銀時は高杉の顔の横に、刀を突き刺していた。


ズッ


床に刺さった刀を引き抜く銀時。


(こいつ、どんだけ、あのチビにご執心なんだよ…)


「お、おい、銀時。俺は別にあいつのこと何とも思ってねェから…」


「…だろうな…。何か思ってたら、顔に風穴開いてたぜ。あ〜、スッキリした」


刀を鞘にしまいながら、ニヤッと黒い笑みを浮かべる銀時。


「お前、…ただの八つ当たりかよ?!」


「『ただの』じゃねぇ…、立派な八つ当たりだ」


「何、自信満々に言ってんだよ?!テメェのせいで口の中切ったじゃねェか?!」


「ふん、油断したてめぇが悪ぃ」


ケラケラ笑いながら、高杉に背を向ける銀時。


(こいつ…、ムカつく)


グッと竹刀を持ち、銀時を見据える高杉。


「おい、テメェもう一回、勝負しろ」


銀時はピタッと止まり、そして、ゆっくりと振り返る。


「…何?やんの?」


「こんな理不尽な勝負が……あるかァァァ!!!」


バシンッ


銀時に攻撃する高杉、それを、鞘で辛うじて防ぐ銀時。


「……てめぇ…、やってくれんじゃねぇの」


「ハッ、テメェは頭冷やしやがれ、
だからそんな根性曲がった頭してやがんだよ」


バシンッ


竹刀と鞘がぶつかり合う。


「!?…てめぇ!?人の天パ、バカにしやがったなァ!?」


「事実を言ったまでだろうがァ。腐れ天パ」


パーン、パンパン


剣を交差させながら、お互いを罵り合う。


「んだと、ちょっとサラッサラッの直毛だからって、調子にのんなよ」


「乗ってねェよ。なんだァ、僻みか?」


「誰も僻んでねぇよ。
雨の日とか髪爆発しなくていいなとか、顔に絡まなくていいなとか…」


「あァ?!羨ましいのかよ?!」


「黙れ、羨ましんだよコノヤロォォォ!」


「結局、羨ましいんじゃねェかァァァ!」


パァァァァン


お互いの得物が激しくぶつかり、空を飛んだ。


ガシャ、バン


床に落ちるそれぞれの得物。


「「はぁはぁ」」


チラッと見遣る二人。


「「俺の勝ちだな」」


「「どこがだよ?!」」


「よく見やがれ、額、掠ってんだろうが」


「どこに目ェつけてやがんだ、頬、掠ってんだろうがァ」


お互い、頬と額を触る。


「「チッ…」」


「ほんと、てめぇはムカつく」


「そりゃ、こっちの台詞だ、バカ」


ガシャ


銀時は落ちた刀を拾う。


「おい」


(…まだ、やんのか…?)


「悠凜には近づくな」


銀時は背を向けたまま、一言、言い放った。


そして、部屋から出て行く。


銀時が部屋から出ると、廊下に桂の姿があった。


桂に一瞥だけ向けると、そのまま歩き出した。


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