落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第拾弐幕* 誕生日
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【銀時&悠凜side】


「悠凜、何して遊ぶ?」


「う〜んと…、踊り見てほしいな」


「踊り?」


「うん。まだ、母上みたいに綺麗に踊れないけど毎日頑張ってるの。
銀時お兄ちゃんと一緒に強くなるって約束したからね」


悠凜の真っ直ぐとした眼差しに、眩しさを感じる銀時。


「そっか、そりゃ楽しみだ」


「銀時お兄ちゃん、その刀借りてもいい?」


「ん?ああ、いいぜ。でも、真剣は重いぜ」


持っていた刀を悠凜に渡す。


「大丈夫、いつも、やってるから」


パッと懐から白色の扇子を取り出し、刀と扇子を両手に持ち構える。


「剣の舞、踊ります」


バッ、シャラ


扇子が開くと同時に、刀が鞘から抜かれていた。


(え?!…、早ぇ…)


パンッ


扇子を閉じる。


一気に振り降ろされる刀。


トンッ


キラッと鈍い銀色に銀時が映り、目の前に悠凜が舞い降りる。


バシュン


扇子が開き、悠凜が視界から消える。


トンッ


遠くに降り立っていた。


手首をくねらせ、刀が弧を描く。


(凄ぇ…、前見た時より綺麗だ…)


バッ


扇子を宙に投げる。


ザンッ、ヒュヒュヒュ


一気に剣劇の音が風を斬る。


ピタッ、ヒラッ


ゆっくり落ちてくる扇子。


カシャン、トン


鞘に納められる刀と手の中に収まる扇子。


ニコッと微笑む悠凜。


「どうだった?」


「え?…ああ…凄ぇ綺麗だった」


銀時は驚きのあまり、普通の答えを返すのが精一杯だった。


「ほんと?良かったぁ」


「それ、瑠璃に習ったんだよな?」


「うん」


「そっか、なら…ちょっと貸して」


銀時は悠凜の持っていた刀を受け取り、鞘から出す。


「悠凜、もう一回舞ってみて」


悠凜に刀を渡し、自分は鞘だけを持った。


「う、うん」


悠凜はさっきと同じように扇子と刀を構え、動いた。


振り下ろされる刀目掛けて、鞘をあてる銀時。


ガキィィィン


「え?銀時お兄ちゃん!?」


「いいから続けろ」


悠凜が後方に飛ぶ。


銀時は悠凜に向かってく。


バシンッ


またも鞘と刀がぶつかり合う。


「!?」


同時に扇子の緘尻を、銀時の顔目掛けて打つ。


ガシッ


銀時に防がれる。


ヒュン


弧を描く刀の上を飛び越える銀時。


扇子を銀時に投げつけるが、躱される。


次に悠凜は刀を素早く振る。


だが、全て防がれ、逆に腕を拘束された。


パサッ


そして銀時の手元に落ちる扇子。


「ニッ、俺の勝ち」


「う!?え〜、ずるい〜」


「バーカ。稽古の時はいかなる場合も、油断しちゃ駄目だぜぇ」


「稽古するって言ってないもん。これ、踊りだもん」


悠凜は口を尖らせていた。


ニコッと微笑み、悠凜の頭に手を置く銀時。


「でも、俺と戦えたろ?」


「……う、うん」


「凄ぇんじゃねぇ?踊りにもなるし、戦いにも使えるし、なッ?」


ニッと笑う銀時。


「この踊り凄いんだね…。
今まで、気付かなかった……銀時お兄ちゃん凄いね」


(まぁ、瑠璃から血の匂いがしなかったら、気付かなかったろうよ。
さすがだぜ、もう少しすりゃ、大人に襲われても叩きのめせるようになるわ)


「これからも瑠璃との稽古頑張れよ。俺も頑張るから」


「うん、これで一緒に強くなれるね」


「ああ、一緒に強くなろう」


銀時は悠凜の頭を撫でた。


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