落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第壱幕* 鬼の子
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松陽は戦場の中を一人歩いていた。


(ここら辺だと聞いたのですが…)


辺りを見回すが、一面屍の山だった。


その屍の中に揺れる小さな影。


ゆっくりと近づいて行く。


「屍を食らう鬼が出るときいて来てみれば…君がそう?また、ずい分とカワイイ鬼がいたものですね」


と松陽は揺れる小さな影、銀髪の子どもの頭に手を置く。


パン、シャラ


咄嗟にその手を払い、持っていた刀を抜こうとする小さき子ども。


「刀(それ)も屍からはぎとったんですか。童一人で屍の身ぐるみをはぎ、そうして自分の身を護ってきたんですか。たいしたもんじゃないですか。だけど―――」


銀髪の子どもは刀を抜き構える。


「そんな剣もういりませんよ。他人(ひと)におびえ、自分を護るためだけにふるう剣なんてもう捨てちゃいなさい」


チャッ、ヒョイ


松陽は自分の刀を投げ渡す。


ガチャ


銀髪の子どもは、松陽の刀を受け取る。


「くれてあげますよ、私の剣。剣(そいつ)の本当の使い方をしりたきゃ付いてくるといい。これからは剣(そいつ)をふるいなさい」


そして歩き出し、子どもの方を振り向き告げる。



「敵を斬るためではない、弱き己を斬るために。己を護るのではない、己の魂を護るために」



字幕 『*第弐幕* 松下村塾』



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