落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜
□*第壱幕* 鬼の子
1ページ/1ページ
松陽は戦場の中を一人歩いていた。
(ここら辺だと聞いたのですが…)
辺りを見回すが、一面屍の山だった。
その屍の中に揺れる小さな影。
ゆっくりと近づいて行く。
「屍を食らう鬼が出るときいて来てみれば…君がそう?また、ずい分とカワイイ鬼がいたものですね」
と松陽は揺れる小さな影、銀髪の子どもの頭に手を置く。
パン、シャラ
咄嗟にその手を払い、持っていた刀を抜こうとする小さき子ども。
「刀(それ)も屍からはぎとったんですか。童一人で屍の身ぐるみをはぎ、そうして自分の身を護ってきたんですか。たいしたもんじゃないですか。だけど―――」
銀髪の子どもは刀を抜き構える。
「そんな剣もういりませんよ。他人(ひと)におびえ、自分を護るためだけにふるう剣なんてもう捨てちゃいなさい」
チャッ、ヒョイ
松陽は自分の刀を投げ渡す。
ガチャ
銀髪の子どもは、松陽の刀を受け取る。
「くれてあげますよ、私の剣。剣(そいつ)の本当の使い方をしりたきゃ付いてくるといい。これからは剣(そいつ)をふるいなさい」
そして歩き出し、子どもの方を振り向き告げる。
「敵を斬るためではない、弱き己を斬るために。己を護るのではない、己の魂を護るために」
字幕 『*第弐幕* 松下村塾』