落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第肆幕* 百合の花
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「うぉりゃー」


「あまい」


スパーン


松陽は笑みを浮かべ銀時の攻撃を躱す。


「いでぇ?!…ちくしょー、もう一回だ」


パン、パン、パン


銀時は松陽に休む間を与えることなく打ち込んでいくが、全て防がれる。


(ほんと…強い子ですね。将来が楽しみですね。銀時…)


松陽は銀時の姿にフッと微笑む。


「?!…てんめぇ…何余裕ぶってやがる!!ジジイ」


松陽の笑顔に銀時は苛立ち、力いっぱい竹刀を振り下ろす。


だが、松陽はあっさりと躱して銀時の腕を打つ。


「う?!…」


痛さのあまり竹刀を床に落とす銀時。


「銀時、お兄さんですよ」


冷笑を銀時に向ける松陽。


(こえぇー。こいつ…ジジイって気にしてんのか?)


銀時は打たれた腕を擦りながら松陽を窺う。


「銀時、私はちょっと客人を迎えに行ってきますので、今日はここまでにしましょう。留守を頼めますか?」


「迎え?」


「ええ、危ない大人も多いですし、心配なので行ってきますね」


「へーい」


銀時は、プラプラと片手を振って横になった。


「あ、銀時」


「あ?」


「いいですか。知らない人が来たら家に上げてはいけませんよ」


ピクッ


「美味しい物をもらってもついてっては駄目ですよ」


イラッ


「しっかり鍵をかけて戸締りを…」


「うっせぇー!鍵なんかどこにあんだよ?しかも、こんなオンボロ道場に金目の物なんてねぇんだから何の心配もいらねぇだろぉーが」


銀時は起き上がり、微笑む松陽に怒鳴り散らした。


「銀時は食い意地が張ってますからね…」


「うっせぇ!早く行きやがれ」


銀時は松陽を追い払うように門前まで彼の背中を押した。


「ちょ、銀時。人の話は最後まで聞きなさい」


「チッ…じじいが」


コツン


メリッ


銀時は松陽に頭を叩かれ、地面にめり込んだ。


「1時間ほどで帰ってきますから」


松陽は微笑み出掛けて行った。


「…」


銀時は漸く出て行った松陽の後ろ姿を半眼で見据えていた。


「痛ぇよ」


松陽が見えなくなると銀時は、トコトコと手習い部屋に向かった。


部屋の縁側で横になり、銀時は目の前の庭を眺めていた。


庭の桜の木は全て散り、今は花壇には白く凛とした花が咲き誇っていた。


(すげぇ真っ白…綺麗な花だな…)


ボーっと庭を眺めていた銀時だったが、日の光の心地よさと、稽古の疲れもあり夢の世界へと落ちて行った。


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