落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第肆幕* 百合の花
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しばらく行くと道沿いに家が見えてきた。


(ここか?…)


「おい、悠凜。お前ん家、ここか?」


「そうだよ」


(へぇ…思ったより大きい家だな…)


「ちちうえぇー、ははうえぇー。ただいま」


悠凜は家に着くなり、大きな声を出した。


「おお、悠凜。おかえり」


少しすると中から松陽と同じくらいの年齢の男が一人出てきた。


悠凜はその男に飛びつくように抱きついた。


「ちちうえぇ。ただいま」


「お?良い子にしてたか?」


「うん、してた」


男は悠凜の頭を撫でる。


「松陽、悪かったな」


「いいえ、とてもいい子でしたよ」


男は銀時に視線を移した。


「お?この子か?瑠璃の言ってた銀髪少年って…ふ〜ん」


ニッと笑いながら銀時に近づく。


銀時は警戒するようにスッと後ろに下がり、刀を抜こうと構える。


「…嫌われてんのか。それとも怖いのか?」


「お前…血の匂いがする」


「?!…」


(へ〜え…勘が鋭い子だね。松陽もまた凄い子拾ったもんだ…)


「あは、はははははは」


男は急に大声で笑い出した。


「な?!なんだよ」


「いや…すげぇガキだな。俺は薬師を生業にしてるんだ。さっきまで怪我人診てたから匂いがついたのかな?」


フッと優しく微笑み、銀時と視線を合わせる男。


「お前むちゃくちゃ苦労したんだな。大丈夫だ。俺は敵じゃない」


(こいつ…この目、どこか…松陽と似てる)


銀時は男を睨みつけながら、刀から手を離した。


「…ありがとよ」


ガシガシと男は銀時の頭を撫でた。


「な?!何しやがる!」


銀時は男の手を払う。


銀時は男と少し距離を置き、睨みつける。


「お、嫌われたか?」


「碧?…」


奥から瑠璃が現れる。


「ははうえー」


「悠凜おかえり。松陽先生もありがとございます」


瑠璃はしゃがみ込み、悠凜の頭を撫でる。


ゆっくりと銀時の方に視線を移す瑠璃。


「あら、銀時くんも一緒に来てくれたの?遠いのにありがとうね」


(?!…)


銀時は瑠璃の笑顔に顔が赤くなり、視線を逸らす。


「べ、別に…遠くねぇよ」


「ずっと、おにごっこしてきたの。おててもつないだんだよ。ねぇ〜、銀時おにいちゃん♪」


悠凜はニコッと微笑み、銀時の手を握った。


「?!…お、おい悠凜!」


「…へぇ…」


「?!」


銀時は碧の声の低さに驚いた。


「な、なんだよ」


銀時は刀に、手をやる。


碧は銀時にジトーっと視線を送る。


「一日で俺の娘誑かしやがって…」


スパン


「バカじゃないの碧」


碧に冷笑を向ける瑠璃。


「いってぇ。瑠璃〜」


瑠璃は碧の頭を持っていた扇子で叩いていた。


銀時は瑠璃の冷笑に冷や汗を覚えた。


「冗談だよ…瑠璃」


「そう」


ニコッと満面の笑みを向ける瑠璃。


(女ってこえぇー…)


「銀時くん。また悠凜と遊んでね」


「は、はい」


思わず直立不動になる銀時。


「また、おはぎもってくね」


悠凜も微笑む。


(同じ顔してらぁ…。こいつもこうなるって事か…)


「では、我々はこれで失礼しますね。銀時、帰りますよ」


「あ、ああ」


「ばいばい、銀時おにいちゃん」


「お、おう…」


銀時と松陽は来た道を戻る。


「またね。銀時おにいちゃん!」


背後から聞こえた声に振り向く銀時。


悠凜は満面の笑顔を銀時に向け、両手を大きく振っていた。


(ほんと、よく笑う奴だなぁ…)


「ああ、またなぁ」


銀時も悠凜に笑顔を向けた。



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