落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第捌幕* 悪ガキ3人
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早朝の松下村塾、道場に一人。


シュン


素振りをしている銀時がいた。


(負けた…。しかも同じ年くらいの奴に…。これじゃ、悠凜を護れねぇ)


ギリッ


竹刀を強く握り、目を瞑る。


先日の高杉の動きが映しだされると同時に、目を開ける。


ダン、シュン、シュン


「うぉりゃー!」


バシッ


…―――


訪れる沈黙。


「…はぁ、はぁ…はぁ」


(駄目だ…。これじゃ、こんくらいじゃ…あいつは、また立ち上がってくる)


「ふぅー…」


息を整え、稽古を繰り返す。


「銀時」


声がした方に視線を向けると、松陽がいた。


「…なんだよ」


「いえ、随分と熱心だと思って」


銀時は松陽の言葉に眉間に皺を寄せる。


「…松陽…眺めてねぇで、相手しろよ」


「寝起きなんですけどね」


「ふん、化け物が言いやがる」


「アラ、失礼ですね」


松陽はフフっと笑いながら構える。


銀時も松陽に構え直す。


「…松陽、いつになったら俺にお前の剣を教えてくれるんだ?俺が、弱ぇからか?…どこまで強くなればいい?」


「…銀時…、私は貴方に私の剣を教えるつもりはありませんよ」


「?!」


「勘違いしないで下さいね。銀時、貴方は私を化け物だと言いました。その化け物の剣で人を斬るんですか?」


「違う!俺は…、…護りてぇ奴がいるんだよ。そいつを護れるくらい。そいつの大事に思うものを護れるくらい……。そいつと一緒に…護っていきてぇんだ」


「そうですか。でしたら尚更、教えられません」


「何でだよ!!!松陽!!」


「言ったでしょう…。私は化け物。化け物の剣で護られて、その子は嬉しいでしょうか。その子を護りたいのなら、銀時。貴方は貴方の剣で護らなくてはいけません」


「己の魂を護る剣ってことか」


「ええ、『敵を斬るためではない、弱き己を斬るために。己を護るのではない、己の魂を護るために』です」


「そーかよ。だったら…勝手にやってやらぁ!!」


銀時は、竹刀を振り上げ松陽に挑む。


パーン


ぶつかる竹刀。


強く押し込むが、軽く去なされる。


「うぁ?!」


パン


銀時が態勢を崩したとこに、叩き込まれる竹刀。


「いてッ…」


すぐに立ち上がり、構える銀時。


「まだだ…行くぞ、松陽」


(本当に、銀時も相当な負けず嫌いですよね…)


「はい、どうぞ」


「おおー」


パン、パン…パーン


バシン


吹き飛ぶ銀時。


「まだまだ…」


「何回でもどうぞ」



―――…1時間経過。


「はぁ…はぁ…」


(全然ダメだ…)


ゴロンと銀時は床に寝ころぶ。


「惜しかったですね」


「…どのへんが?」


「このへんです」


「…だから、どのへんだよ?!」


「そのへんでしょうね」


(コノヤロー…)


「さぁ、銀時。そろそろ、朝ご飯にしましょうか」


「………ああ」


銀時はしぶしぶ立ちあがる。


(痛ッ?!…体中いてぇ…。ちくしょー)


痛む身体を擦りながら、歩き出した。


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