落花流水 〜過去篇・壱 遭逢の時〜 

□*第玖幕* 因と業
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村から離れた、少し古い民家の前にいた。


「今日からはここが学舎です」


松陽の言葉に、高杉、桂は荷車を引く手を止めた。


「ここが新しい学舎なんですね、松陽先生」


「こんな田舎なら役人も来ねェだろうな」


「来ても関係ねぇよ。おい、チビ。看板掲げとけよ」


銀時はスタスタと門をくぐる。


「オイ?!チビってなんだ?!お前とそんなに変わらねェだろうが!?
それにてめェだけ、何そんな軽そうなもん持ってんだよ」


銀時の手には百合の球根が、大事に携えてあった。


「あ?軽くねぇよ。こりぁ、大事なもんなんだよ」


珍しく、睨みつける銀時の視線に驚く二人。


(こいつ、いっつもふわふわ何考えてるかわかんねェのに…『大事なもん』なんてはっきりいうんだな…)


「はいはい、では、晋助と小太郎は看板を掛けて下さい。
終わったら、中の掃除を手伝って下さいね。で、銀時は…」


松陽は銀時の姿を目で追い、彼を見つけると微笑んだ。


銀時は庭に入り、すでに百合の球根を植え始めていた。


(やれやれ、悠凜ちゃん…喜こばせるためですかね)


「銀時、それが終わったら御遣い…「めんど…」」


「悠凜ちゃんのとこに…「行く」」


お互いの言葉に言葉を被せるように、話を進める二人。


「宜しくお願いしますね」


ニコッと微笑む松陽。


「『悠凜』って?」


話を聞いていた高杉がニヤッと笑いながら、銀時に話しかける。


「誰だっていいだろ…てめぇには関係ねぇ」


「へぇ〜、お前みてェな奴でも惚れた女がいるんだな。どんな女だよ」


「惚れた女子がいるのか、銀時?紹介しろ」


ガシッ


銀時が二人の胸倉を掴む。


「そんなんじゃねぇよ。無粋な詮索すんな」


パッと二人を離し、また、球根を植え始めた。


(いつも飄々としているこいつが、ここまで感情を出すなんて…)


(こいつもこうゆう感情を出すことがあるんだな…)


((ますます、見てみたくなった『悠凜』って子…))


高杉と桂は呆気に取られながら、銀時を見据えていた。


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