縁と月日は末を待て
□*序幕* 屍を喰らう鬼
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ザッ
歩いても歩いても、見わたせば何も映していないモノがあちこち転がっている。
ガサッガサ
そのモノらを漁る小さき者が、独りそこにいた。
黒い布切れを頭からすっぽり被り、衣擦れの音だけが無情に響く。
「おい、小童。何やってやがる」
男の声に、小さき者が振り返る。
「ヒッ!?」
その子どもは紅緋色の瞳をし、布の切れ目からは銀色の髪が零れ落ちていた。
「お、鬼?!」
ザンッ
男は子どもに刀を振り下ろしたが、躱される。
子どもは男を憎悪の目で睨みつける。
「お、おのれぇ〜」
男が振り被ると同時に、ザシュ…―――。
男は何も映していないモノになった。
鬼は、そのまだ温もりを残すモノを漁り、懐から食い物を手に入れる。
ガツガツ
生きるためにさ迷い、生きるために戦い、
生きるために『屍を喰らう鬼』がいた。