★陽だまりの中で★【完結】

□12_金平糖
1ページ/1ページ

ヒロインside

飲み会の翌日

部下に五番隊と十番隊へ二日酔い用の薬を配達させた

いつもなら自分で行くけど、そんな気分になれない・・・

「はぁ・・・」

仕事をする気にもならないなぁ

いや、普段はちゃんとやってるからねっ?

だから、たまには良いのよっ

それに、さぼりではないからねっ

決して!


他の隊士に行先を告げ、四番隊隊舎を出た




そして、向かった先は三番隊


ローズ隊長に断って隊士を数名借りた

木刀を持ち、順番に稽古相手になってもらう

最後に三番隊副隊長であるイヅルにも数十分相手をしてもらった後・・・




「ありがとう。イヅル」

「いえ、僕で良ければいつでもお相手しますけど・・・何かありました?星先輩」


以前より顔色の良いイヅルが少し心配そうに私の様子を伺っている

イヅルは恋次や桃と同様に、霊術院の時からの後輩

特にイヅルが三番隊、私が四番隊になってからは時々こうやって稽古相手をしてもらっている

副隊長になってからも全く嫌がる事もなく相手をしてくれる良い後輩だ

そのせいか、私の変化にも気が付きやすい

「なんでもないわ。久しぶりに体を動かしたかっただけよ」

そう言って笑えば、イヅルはそれ以上何も聞かない


ほんと〜〜に良くできた後輩だなぁ


体を動かしたら気持ちも少しスッキリした

胸元から手拭を取り出し、汗を拭きながら三番隊隊舎の方へと向かう途中・・・


「ローズ隊長、隊士をお貸し頂いてありがとうございました」

どうやらローズ隊長は私たちの稽古を見ていたようだ

「いいよ。いつでもおいで」

そう言って優雅に微笑むローズ隊長

その隣には・・・


「平子隊長?」

何故か平子隊長が・・・

しかも、珍しく眉間にシワが・・・

「まだ二日酔いですか?」

薬が効かなかったのかしら?

首を傾げると・・・

「薬はよう効いたわ。おおきにな」

「それなら良かったです」

でも、二日酔いじゃないなら何なんだろう?


「なんでローズは名前なんっ!?」

「・・・はい?」

平子隊長の言っている意味が良く分からない

するとローズ隊長が・・・

「以前、僕の苗字が長いって話しになったんだよ」

ああっ!そういう事?


ローズ隊長が復帰して直ぐの頃

鳳橋隊長って名前が言いづらいって言ったらローズで良いって言ってくれたんだよねぇ

それが言いやすくてローズ隊長が定着した

「なら、俺も真子でええで?」

「いや、平子隊長は別に言いにくくないので大丈夫です」


即答すると平子隊長の何故か打ちひしがれた

どうしたんだろう?

隣でローズ隊長が苦笑いしながら・・・

「真子、それよりも星に用があったんじゃないのかい?」

「そうやっ!昨日はすまんかったなぁ」


途中で寝てもうて・・・と


「クスクス。気にしないで下さい。でも、あまり飲みすぎは良くないですからね?」

「気ぃつけるわ・・・それと、薬もなぁ。助かったわぁ。おかげで珍しく仕事も進んだしなぁ」

やから、これ・・・と平子隊長が小さい紙袋と差し出した


「これは?」

どうやら私に頂けるようだ

中を見ると・・・

「これはっ!!老舗菓子店の超高級金平糖じゃないですかっ!」

私たち平隊士には手に入れる事も出来ない

副隊長たちでも無理なものだ

「あ〜、この店は昔と変わっとらんかったからなぁ」

「私、初めてですよっ。ここの金平糖っ。本当に良いんですかっ?」

昨日も対して介抱してないし、薬だって部下に頼んで届けてもらったのにっ!?

「そない喜んでもらえるとは思わんかったけど、良かったわ」


そう言って平子隊長は汗で顔に張り付いていた私の髪を指先で掬い、耳にかける

指先が頬に・・・そして、耳に触れる


その時の平子隊長の表情が・・・

あまりに優しく、温かい笑顔で・・・


心臓が跳ねた・・・


_
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ