Dream
□あなたの隣(完結)
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「おじゃましまーす」
「もう何度も来てんだろ、ソワソワすんな」
私は万里が所属してる劇団の寮にお邪魔していた。
確かに何度か遊びに来ているし、劇団員さんとも顔見知りだが、男性が沢山いる寮に入るというのが私を挙動不審にさせていた。
「いや、でも、やっぱ緊張するよ……」
「チキン」
「はぁー???」
万里の発言に思わずキレるが、こんなのいつものやり取りだ。
きっと彼女だったらもっと扱いは丁寧なんだろうな……なんて勝手に想像してたら誰かに思いっきりぶつかった。
「……っ、す、すみません」
「あ、いや、大丈夫だ」
ぶつかったのは臣さんって人だった。
確か万里と同じ秋組の人。
私よりも随分背が高いから、すごく見上げてお詫びをする。
「ったく、ちゃんと前向いて歩けよ。臣、悪かった……」
「いやいや、むしろ図体でかい俺とぶつかって怪我してないか?」
「大丈夫です。ほんと、すみませんでした」
「それならいいんだ。可愛い子に怪我させなくてよかった」
ごゆっくり、そう言って臣さんは去っていった。
可愛い子なんて久方ぶりに言われたから、恥ずかしくなってポーっとしていたら万里に
「お世辞にきまってんだろ?」
と言われて腹が立ったから、後から蹴りを入れてやった。
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