居場所のない少女

□浮気症の貴方
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カーテンの隙間から朝の優しい日差しが女の眠りを妨げた。横にいるピンクのモコモコを起こさないようにそっと足を下ろした。すらっと伸びた足は今にも折れてしまいそうなくらい細くそして病的なほど白く綺麗だった。



「…んっ、ラナ…?」


寝起きの少し掠れた声で名前を呼ばれたラナは少し申し訳そうに舌をチロリと出しはにかんだ。


『ごめんね、起こしちゃったみたい。』


凛とした心地よい声が室内に響く、すらりとした手足、透き通るような白い肌、高い鼻に薄い唇、長い睫毛、大きな瞳はコバルトブルーに輝いている。全てが完璧で全てが美しい。

「いや。おれもそろそろ起きる」

そう言って身体を起こし脇に置いてあったいつも付けている特徴のあるサングラスを掛けた大男はドンキーホーテ・ドフラミンゴ

ドレスローザの現国王でありドンキーホーテ海賊団の船長、そして七武海の1人。もうひとつの顔は闇の取り引き人ジョーカー…悪のカリスマ。そんな彼に楯突こうというものは一瞬にしてあの世に連れて行かれるのだろう。


『今日はいつもより早起きだね?何かあるの?』

鏡台の前に座り肩まで伸びた髪を梳かしているラナは鏡越しにドフラミンゴを見ながら尋ねた。

ドフラミンゴはベッドから降り支度をしながら

「あぁ、今日は大事な要件がある。1日開けるがまぁおとなしく待っとけ」

『珍しいね。やけに気合い入ってる』

「そうか?大事な要件だからな」

ラナは髪をとく手を止めドフラミンゴの方に向き直りニコリと笑った

『そうなんだ。』

「あぁ」

『そっかぁ。ドフィ…嘘ついてるよね、女の子に会うのが大事な要件なの?』

ラナは笑顔を貼り付けたまま言い放った。ラナの言葉にドフラミンゴは口をへの字に曲げラナの方へ顔を向ける。

「何言ってやがる、おれはラナちゃんしか興味ねぇってこの前言ったはずだが」

ドフラミンゴの声はいつもと変わらない。

『違うの?私別にいいよ。ドフィが他の女のとこに行っても、結局私のところに帰ってきてくれるんでしょ?だったら行ってあげたら?』

ラナは再び鏡を見て髪を整えながらいつもより少しだけ低い声で言った。

「…そうか。」

ポツリと零した声にラナは聴こえないふりをする。そんなラナを置いてドフラミンゴは身支度を終えて部屋から出て行ってしまった。


(そうかじゃないわよ!別にいいわけないだろ!!)


ドフラミンゴが出て行ってから貯めていた怒りを握りしめていた櫛にぶつけるとポキリと音を立てて折れてしまった。

ラナは深くため息をつく。

ラナのブラウンの髪がさらさらと靡いた、ドフラミンゴが部屋の窓を開けて行ったからだ。

開けて行ったくせにカーテンは縛っていなかったので縛られていない自由に動けるカーテンは外に出たり引っ込んだりしてラナの気持ちを余計苛立たせた。ラナは立ち上がり無造作にカーテンを縛って自由を奪った。


ここ最近ドフラミンゴがよくいつもより服装とか身だしなみを気にしながら外に行ってるのを見かけていたけれど本当に浮気されてるんだと実感したラナはショックを隠しきれなかった。そんなラナはよたよたとベッドの方へと歩き始めた。

キングサイズのベッドは小柄なラナには不釣り合いだったがこの部屋の家具は全てはドフラミンゴが用意した。真っ白なドレッサーやクローゼット。机もイスもソファーも全部全部高級なものに違いない。窓の淵にポツンと植木鉢に咲いた小さな薔薇の花。全部彼の趣味、少しロマンチックな部屋でたまに可笑しいなと感じる。そんな部屋。私の抜けれない広い広い檻。

『……もう一回寝よう。』





夢の中で貴方に抱きしめてもらえるかもしれないから。






 

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