居場所のない少女

□居場所と私
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全て私の悪い夢だったらどれだけ救われてただろう。けど心の隅できっと本当のことだったら、と後悔したかもしれない。

けど夢じゃないのは事実で私はまだ少し生きるという選択肢を選択するしかないのかもしれない。


起きるとそこはキングサイズのベットにぽつんとひとりで寝かされていた。傷はあちらこちらに出来てたはずだったそれもきちんと手当てを施されていた。

足は多分当分動かせないだろう。窓から差し込む光は強くて私は勝手にお昼頃だと判断した。何があったかはきちんと覚えている、誰に助けられたかも記憶している。あれはきっと




『ドンキーホーテ・ドフラミンゴ…。』


ラナのか細い声がドアの開く音と重なった。

「ようやく起きたか。」

『…』

「…まぁいい。飯は食えるか?」

本当に悪のカリスマと呼ばれているのかどうか疑うほどドフラミンゴは優しい口調だった。そんなドフラミンゴにラナは少し面食らった。ラナはベットに乗ったまま上半身を起こしてドフラミンゴに返答した。

『ありがとういただきます。それより自己紹介はした方がいい?』

私の発言を聞いた直後ドフラミンゴは電電虫を取り出しこう伝えた。


「ベビー5飯の準備をしろ。それてで例の女の部屋に持ってこい。……あぁ。」

用件を伝えるなり直ぐに電電虫を、しまいまたこちらに向き私の顔をまじまじと見つめながらあまり答えたくない質問をしてきた。

「いや、いい。それよりお前なんの能力者だ?」

『…それは。言わないといけませんか?』

探るようなドフラミンゴの表情に少し怖いと感じた。もしかしたらまた繰り返すのかもしれない。

「あぁ、言え」

その一言がすごく重みのあるような錯覚に陥ってしまうほどドフラミンゴは低くて重圧のある声色だった。ラナは観念したように俯く。

『私の能力は……人の本音が暴けるバクバクの実。私は人が普段感じても言えない事を包み隠すことができなくさせるんです。』

ドフラミンゴは少し不思議そうに小首を傾げた、それはそうだ私の能力は一見しょうもないように感じるのだから。

「…その能力でどうやってあそこまで崩壊させたんだ?」

『それは…。人が秘めていた殺意を大きく膨らませて行動させられるんです』

そう。人はだれでも少しでも他人に殺意が芽生える時はある。それを実行しないかするかでだいぶ未来は違うけれど。

「ということはお前が直接手を下したわけではなく、もともとあった殺意を膨らませて殺さないと気がすまなくするってことか?」

『その通り。すごく滑稽だった。あれだけ見繕った国が一気に殺意の海になったんだもの。みんな意識なんてなくてただ自分に害のある人間を、殺していってた。』

今でもすごく鮮明に覚えてる住人達の叫び声。私に銃を向ける姉の泣きすぎてぐちゃぐちゃになった顔。

手が震えてくる。もちろん怖いからじゃないバカバカしくて仕方のいのだ。

そんなラナをドフラミンゴは気に入ったと言わんばかりに手を差し伸べた。その行動に次はラナが小首を傾げた。

『…それはどういう』

「おもしれぇ。どうせお前に帰る場所なんてねぇんだろ?そこで考えろこの手を取るか取らないかはお前次第だ。」

『この手を取れば貴方の傍に置いてくれるの?』

ドフラミンゴはゆっくり頷いた。

ラナの左手がドフラミンゴの右手をしっかりと繋がれた。ラナに迷いはなかった

『最初から手を取らないって選択肢はなかったんでしょう?私の力全て貴方に捧げます。ドンキーホーテ・ドフラミンゴ』


ラナがそういうとドフラミンゴは満足そうに笑った。








コンコンコン

3回のノックの後にメイドのような服を着た女がトレイに食事を乗せて持ってきた。部屋中にいい匂いが立ち込めラナは最近食事をしていなかったことを思い出した。

「言われた通り持ってきたわよ。……あんたがラナっていうお姫様?」

『そうだよ。はじめまして。あなたは?』

「私はベビー5。困ったこととかわからないことは私に聞いて!」

最初怖い印象があったベビー5はまだ幼さが残っているような無邪気な笑顔でラナにトレイを渡した。


「なんだ、嬉しそうだな?」

「同い年くらいの女の子なんてこの屋敷にいなかったからお友達ができたみたいで嬉しい!」

キャキャとベビー5はラナの手を取った。



『そうだね!お友達になろう。私もずっとお友達が欲しかったの。』

少し寂しそうに笑ったラナはベビー5の細くて綺麗な手を握り返した。



その様子を、見たドフラミンゴは何も言わず部屋から出ていった。何故か何もかも見透かされてる気がした。ラナが食事を終えるまでベビー5はラナが退屈にならないようにドフラミンゴに婚約者を街ごと消されたことやうっかり人を殺しかけたことなど色んな体験談を話した。


『ごちそうさま。とっても美味しかった!あと面白いお話をありがと』

「それは良かった。まだ足の傷が当分治らないって治療医が言ってたから安静にしててね!それじゃあ持っていくわね。またお話しましょう!」


そう言ってベビー5は部屋を去っていった。





『……私ここにいてもいいんだ』

ラナは小さくつぶやき真っ白なシーツを思い切り掴んだ。真っ白なシーツにポタポタと雫が落ちてきて模様をつける。



私の居場所をやっと見つけたよ。



もう、きっと悩まない。





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