大切な思い出をつくろう_1
□1_死んで、生まれた日
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「やっぱ家族との思い出とか友だちとの思い出とかは、味が濃厚。うん…命拾いしたな。ここで止めとこう。ごめんねー?捕食しちゃって」
悪魔の目には、蛍火のような儚い光が見えていた。
ほとんど形もとれていなくて、ぼやけている。
『…体がなくなっちゃった…』
「ごめんね?ボクが魂を食べちゃったから、もう幽霊にもなれない。いやー、あんなに食べる気なかったんだけど、お腹がぺこぺこでさー。命拾いしたよー」
悪びれなく悪魔は言い、気分よく、小さくなってしまった女性の魂を手にとって、粘土をこねるようにして掌でこすり合わせた。
すると、儚い光は人型になった。
「今日から君はこの姿で生きていってね」
『私、死んだんだけど。普通に無理じゃない?』
「意外と儚くないね、君。でも普通に無理だね。しょうがないなぁ、じゃあ、君の趣味に合わせて二次元世界におとしてあげるよ。これが本当の“夢おち”」
なーんちゃって。
と笑顔を浮かべた悪魔は「寒!」と言われそうな気配を察して、即座に二次元世界に魂を蹴り落とした。