大切な思い出をつくろう_3

□56_激動の人生
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そういうわけで、避けられているということを確信したコフィンは唯一の接触ポイントである就寝前を狙って二人に積極的に話しかけてみたのだが、セラスからは(眠りしびれ薬と交換で)”フィリアボム”のレシピをもらったし、ジューダスからは「道で拾った」などという苦しい嘘を披露された上で(イレーヌへの手紙に添えてあったはずの)”チーズケーキのレシピ”を渡されたりした。
…手に入れたのはレシピだけだ。

『どうやら、オベロン社廃坑関連のことでマスターを意識してるみたいね』
「何を気にしてるのか知らないし、そっとしといてほしいのならそうしておいてもいいんだけど、私が…寂しいんだよね。”こっちの世界”に居られるのはそう長いことじゃないだろうし」

『私が側に居るじゃない♪』
「ハロルドが側に居てくれてなかったら、弟欠乏症とかでひからびてるかもね♪」

ーというのは冗談にしても、側に居られない日が何日も続くと気が滅入りそうだ。

『マスター、船首の方に、お目当ての人が集合してるみたいよ。ひからびる前に会いに行ったら?』
「ホント?ハロルド、よく見えるね」

『あなたからは見えない?』
「見えないけど…」

見張り台からは船上の様子が見渡せるが、コフィンの目を以てしても、ここから人を一人一人判別するのは難しい。
今更と言えば今更だが、ハロルドの視界範囲はどうなっているのだろう。本当に今さらだが、謎だ。

『口論しているみたいだけど、あまり良い雰囲気じゃないわね。放っておいていいの?マスター』
「よろしくはないね」

コフィンは、よっぽどハロルドの視界範囲を訊いてみたいと思ったのだが、旅の仲間たちが仲違いを起こしているとなれば後回しにするしかない。
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