有象無象の本棚

□Hochzeit
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大きな街に着いた。これまで牧場があったり、田園風景があったりとのほほんとした風景が続いたため、悟浄は少し浮かれていた。
そんな時、街の外れで見た光景に心打たれた。

「いいなあ。」悟浄が知らずうちに呟いた一言を三蔵は聞き漏らさなかった。
ふん、と鼻であしらうものの、頭の中はぐるぐると思考を巡らせた。
結論が出るまでおよそ30秒。
後は行動に移すだけだ。

「おい、八戒。所用が出来たんでな。俺は別行動をとる。」
「はい?珍しいですね。三蔵がわざわざ出向くなんて。」
「野暮用だ。」
「わかりました。では、僕たちは買い出しなどしてきますね。」

昼御飯を食べ、早々に別行動をとった三蔵。最初に出向いたのは貸衣裳屋だった。
「おい、180cmが着れる物はあるか。」
「お客様、男性用でしょうか?女性用でしょうか?」
「女性用だ。」
「かしこまりました。用途を教えていただけますか?」
「どんなものがある。」
「カジュアルにデートというものから、結婚式の参列のためのもの。また、花嫁衣装ですね。」
花嫁衣装と聞いて、少しドキリとした三蔵。思わず耳が赤くなった。
「は、花嫁衣装にはどんな種類があるんだ?」
「(かわいい人やな。)基本的にはチャイナドレスやチマチョゴリ、アオザイ、それに白無垢ですね。」
店員からそれぞれの衣装の写真を見せてもらいながら、思案する三蔵。
どうやらアジア圏の衣装なら揃うらしい。
「では、これにする。」
「かしこまりました。ヘアメイクもされますか?」
「ああ、頼む。やつの髪と眼が紅色なんでな、それに合わせたものがいい。」
「かしこまりました。では当日は宜しくお願い致します。」
「ああ。」

三蔵の去った後、店員はすぐに準備にとりかかった。何せ旅の人で、先を急ぐとのこと。それでも人生の大事な場面なのだから、充実した1日にしてあげたいと、血がたぎっていた。
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