有象無象の本棚

□椿屋
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「夜ののど自慢大会?」
八戒が見つけたポスターには、今日近くのクラブで行われるイベントが掲載されていた。

「んじゃ、俺出てみるかね。」と、悟浄。
「女目的じゃねえのか。」と、三蔵。
「お手並み拝見ですかね。」と、八戒。

悟空は宿で爆睡中である。

ではクラブへ行ってみよう!
悟浄がエントリーしてみる。
三蔵も八戒も知らない曲だった。
クラブの中、自分達と変わらない観客が多い。
適当に席を見つけ、酒を注文し悟浄の番がくるのを待つ。
「なあ、三蔵。その法衣貸して?」
「はあ、何でだ。」
「何でも?」
ちっと舌打ちをすれば、三蔵は帯を解き、アンダー姿になった。
「あ、帯いらない。」

「では、沙悟浄さん!お願いします!」
悟浄はジャケットを脱いで、代わりに三蔵の法衣を羽織った。

舞台にたちスポットライトを浴びる。
スティックのカウントが入り、ギターが力強く哭いた。

〜夕暮れの服を纏って 三日月の下にしゃがんだ〜
悟浄の歌が始まった。切なくでも男臭く歌い上げる。

〜このままじゃ逃げ切れずに 全て奪われてしまう。〜
スタンドマイクにを掴んで、舞台の向こうを見ている。

〜操られた心の望み通り〜

〜燃え盛る火に分け入って 荒れ狂う波に寝そべった〜

間奏中、悟浄は法衣を翻しながら、ステージ中央でくるっと回った。
法衣の波と紅い髪がマッチして、とても扇情的だ。

いつもの悟浄のイメージは払拭されて、のど自慢大会とは思えないような、悟浄のライブのように感じる。
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