有象無象の本棚

□哀歌
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満月が俺たちを見下ろしている。
月に照らされた三蔵の髪がきらきら輝いてきれいだった。

「考え事とは余、裕だな!」
「ちょ、まっ、ああ!」
三蔵に突き上げられて、咄嗟に背中にしがみついた。
強烈な刺激に耐えるために、爪をたててしまう。
「っつう。」
「んあ、さんぞ、ごめん。」
「いや、いい。」
三蔵は俺を絶頂に誘い、俺は抗うことができなかった。

意識を飛ばしてしまって、目が覚めたのは空が白んだころだった。
三蔵が俺に背を向けている。背中には俺がつけた傷があった。
三蔵に俺の存在を刻み付けている気がして、恥ずかしくもあり嬉しくもあった。
窓から1片の桜の花びらが入ってきた。この季節にはおかしいし、何でだろうと疑問に思ったが、花びらが三蔵の背中を伝ったとき、とても倒錯的に思えて愛しくなった。
思わず背中の傷にキスをした。
「そんなかわいいことをするなら、起きてるときにするんだな。」
三蔵が俺に覆い被さってきた。熱のある目で見つめられると、逃げることができなくなる。
その先にある激しい快楽と熱情を知ってしまったからだ。
「さんぞ、もう朝だよ。ちょっ、だめ、あっ!」
「いい声で啼けよ。」

首筋や鎖骨を唇で、胸や腰を手で愛撫される。
「ぁぁっ、あっ、はぅっ、ああ、あっ。」
「気持ち良さそうだな。」
「もうダメっ!」
昨夜三蔵を受け入れていたから、すぐに入ってくる。あえてゆっくりされているようで、もう感じずにはいられなかった。
どんどん、どんどん深みが増して、目の前がチカチカして真っ白になった。
「あ、あああ、ああああっっ!」
また闇に落ちていく。心も体も三蔵に蝕まれていく。
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