同じ世界を。
□蛍の光
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*ーー夏目side
あれから何も話さないまま家へと帰ろうとした時、キヨが現れた。
彼女の話によれば、あの男性は章史さんと言うようで……
彼もまた、妖が見えることで家族からも周りからもヘンな目で見られて苦しんでいたようだ。
『私たちとーー…、同じだね』
「あぁ…そうだな」
その話に、俺もニャンコ先生と出会う前のことを思い出した。
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辛い事があるたび彼が沼へ泣きに来るのを、キヨはそっと隠れていつも見ていたという。
でも、ある日彼は夜中に沼にやって来て……
キヨは慌てて隠れたが、体が光ってしまい章史さんに見つかった。
ーーその日から、章史さんとキヨは話をするようになり、次第に仲良くなっていき、互いを大切に想い、蜜月とも言える日々を送った二人。
きっとすごく……幸せだったんだろうな
でも、ある日、突然章史さんは妖怪の姿が全く見えなくなってしまった。
力を失った彼は、キヨが触れても…目の前に立っていても、
一切……わからなかったそうだ。
「お前も、いつの日か見えなくなるだろうか…」
キヨのその言葉を聞いた時、
俺はとっさにニャンコ先生を思い浮かべていた。
隣にいた羽叶もきっと、泡雪のことを思っただろう。
「…嫌だな……」
俺は思わず漏らした自分の言葉にハッとした。
なに言ってるんだ。
それが長い間の俺の望みだったじゃないか。
ずっと、ずっと解放される日を望んでいたハズじゃ…
そんな葛藤が……、
心の中でぐるぐる回った。