同じ世界を。
□出逢い
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『お隣は…藤原さん、か』
引越し業者の人に軽くお礼をして、私はお隣の家の表札を確認する。
今日からここで、一人暮らしだ。
昨年、病気で母を亡くした私は……
今まで預かってもらった親戚の家を出て、母の実家に帰ってきた。
お父さんは私がまだ小さかった頃に亡くなっていて、今ではもう記憶もない。
祖父母はもうすでに他界してしまっていて、
あぁ……1人だな。
って気分に浸る
その暗い気持ちを切り替えようと、真っ青に澄んだ空を見上げた。
『………良い天気』
思わず1人で呟いた。
「くぅん」
『…!!』
持っていた小瓶の中から、九尾の狐が顔をのぞかせる。
『泡雪(あわゆき)、勝手に出てきちゃダメでしょ?』
泡雪は狐の一種、ーー空狐(くうこ)と呼ばれる妖で、私のお母さんから譲り受けたの。
……良き理解者だったお母さんは、もういない。
注意はしたものの、泡雪は普段人には視えないから大丈夫かな。
「きゅうっ…!」
なんて思っていると、泡雪がどこかへ飛んで行った。
うわぁっと声がして、
その先を目で追うとーーー
「なんだ……キツネか」
視えるはずのない泡雪を抱えた少年と、少しふくよかな猫ちゃんが
ーーーーいた。