同じ世界を。
□蛍の光
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*ーー夏目side
翌日、俺たちは沼にやって来た。
いつもと変わらず、沼を見ている章史さん。
そしてーー章史さんに寄り添っているキヨ。
[知りたいと思ったの。
淡く光るキヨの姿がもう見えないのに、なぜあの沼に行くのか…]
それは……、昨日羽叶が言っていた言葉。
ふと、彼女は章史さんの隣へ座り
「自分は妖怪が見える」
とカミングアウト。
その行動に少し驚いたが、章史さんは嫌な顔もせず、キヨとの思い出を懐かしそうに話してくれた。
キヨの事が好きだったと言う章史さん。
キヨの姿が見えなくなっても、ずっとキヨのことが忘れられず結婚もしなかった。
ーーしかし、やっと心から愛する女性に会うことができ、更にその女性はとても心の優しい人らしい。
.
三日後に結婚式を挙げたらもうここへは来ない
と章史さんは言った。
そんな章史さんを、婚約者の方が迎えに来た。
仲良く帰って行く二人の後ろ姿を見送りながら、俺は複雑な想いを抱いていた。
ーーすると…
「良かった」
いつの間にか俺の隣に立っていたキヨが静かに呟いた。
「大切な人を見つけたんだな。あの人は、もう一人ではないんだなぁ…」
『………キヨ、あなたはそれでいいの?』
キヨの手が俺と羽叶の手にそっと触れる。
俺たちはその手を、そっと握り返した。