同じ世界を。

□祓い屋と少女
1ページ/4ページ

*ーー夏目side




 
すっかり夕暮れ。






俺たちを送りながら、質屋の自宅の地図を渡した名取さんは



「ここで待ってる」


と言った。





「まだ手伝うなんて言ってませんよっ!」




強引な名取さんに反論しようとしたとき、
突然茂みの中から夏目を呼ぶ声が聴こえてきた。




「夏目〜 夏目〜 友人帳をよこせぇ〜」



「……!」




友人帳を求める妖怪の声がした。

隣りに立っている羽叶も、反応している。




ーー2人を巻き込むわけにはいかない。

素知らぬ顔で、俺は名取さんに別れを告げその場から去ろうとする。




が、名取さんに腕を掴まれ引きとめられた。





「言ったろ?君がコソコソすることはない」



どうしようか迷った。



その時ーー

いきなり茂みの中から襲って来た妖怪に、名取さんは札を挿した棒で痛恨の一撃を喰らわせた。




その一撃で妖怪は負傷。


だけど名取さんはまだ攻撃を加えようとしている。





「もう手負いですよっ!」



「甘いよ。
人を襲うのを許しておけるわけないだろう?」



「あなたの妖怪祓いって、こんなことなんですかっ!傷を負わせるのはやり過ぎですよっ!」




俺が名取さんを止めている間、羽叶はジッと何かを考えているようだった。




「妖怪に苦しめられいてる君なら分かるだろう?」



「……でも、こういうやり方ならば賛同できませんっ!」



「君はそうだろうけど、そこの彼女は違うだろうね」



言いながら名取さんは、羽叶をみた。




『ーー…!!』




「彼女が使役している空狐に、その秀でた妖力……
そして何よりも、その髪の色。


もしかしたらとは思っていたけど、君はやっぱりあの浅葱一族のーー『違う!!!!!』




急に声を張り上げた羽叶。



その雰囲気は、今まで見たことのないものだった。





『私は……、違う。あの人たちとは違う!!!』




静かにそう呟いて、彼女は走り出した。



俺もその後を追って、
そのまま名取さんとは別れた。







ーーせっかく同じものが見える人と出会えたのに、その人とさえ解り合うことは難しいのか…。




同じ痛みを越えてきたハズなのに…。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ