JACK (Long)


□JACK〜7並べ
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ユクリ。
my ともだち。

君が幸せなら僕も幸せ。
君の幸せが僕の幸せ。


いつからそんな風に大切な存在になったんだろう。
君にもっと早く出逢って仲良くなれてたなら僕の人生はもっと素敵だったのに。
世間が楽しくても僕にはそう思えない。
そんなイベントだって君が楽しそうに喋ると楽しみになる。

――――――――
JACK〜7並べ テヨン
(A:my ともだち)

「テヨン?またボーッとして。
疲れたのか?」

目の前に僕と違って垂れ目で優しい笑顔のユタの顔が突然現れる。
見とれる。
君の表情(かお)が好き。

「ううん。違うよ。
ユタこそ身体は大丈夫?
痛いの治った?」

君はどんなに辛いときでも皆の前では見せない。
強い君に憧れる。

「ああー。うん。大丈夫。」

親指を立てて軽く言うけど―――。

ユタ、君は嘘つき。

本当は治りきってない。
ユタは前から腰を痛めている。

だってユタは筋肉はついてるけど細くて本当は体に負担かかってるんでしょう?
僕も細いって言われるけど、でもユタは僕のことを決してそう言えないと思う。
その時。

「兄〜。遊んで下さいよ〜。」

ドンヒョクが甘えてユタの背中に飛びつく。
ユタの顔がほんの一瞬だけ歪む。


でも。

「おい。ドンヒョク急に飛びつくな。兄はお前と違って若くないんだw
びっくりするだろう?」

何もなかったように笑顔でドンヒョクに返事をして切り返す。
誰にでも優しくて明るいユタ。
話している相手に心配をかけない。
君らしい。

「あ、ごめんなさい。
ユタ兄おじいちゃんですもんねw」

ドンヒョクが兄なのにユタをからかうように笑う。
でもちゃんとわきまえてるのか身を引いてユタが体勢を直すのを手伝う。

「そうそう。おじいちゃんだから優しくしてくれよ。…ってなんだと?
ドンヒョク〜。」

冗談には冗談で返すユタ。
笑顔でドンヒョクをくすぐる。
それにドンヒョクが楽しそうにキャッキャッと笑う。
優しく兄らしくそれでいて友達のように振る舞う。

羨ましい。
僕も甘えたい。

ユタ。
君のそういうところが好き。
親しみやすくて誰でも気分が楽になるところ。

「ユタ…」

ユタをフォローしたくて声をかけようとした。

すると

「ドンヒョク、お前衣装合わせまだだろう?そろそろ順番だよ。」

僕よりほんの少しだけ早く声がかかる。
声の主は落ち着いたトーンで、爽やかな声。
そしてドンヒョクをあっさりとユタから離した。

ドンヒョクが去ると

「ユタ兄、今日は調子どうですか。」

そう言ってユタの隣に行き、腰をさすり始める。
ジェヒョンだ。

いつの間に傍に居たんだろう。
というか、どこから見てたんだろう。

ジェヒョンは賢い弟で空気を読むのが上手い。
冗談への切り返しも上手くて。
ドヨンでさえ勝てなくて倍返しで復讐されることもある。
でも弟らしく兄達に甘え、冗談にのっても決して出過ぎたことはしない。

ジェヒョンはさっきまでジャニやウィンウィンと遊んでたのに。

「ああ。今日はちょっと痛む程度だから…大丈夫!
練習はなんとかなる。」

ユタがまた心配をかけまいとニッコリ笑う。

NCT127の振り付けは華やかだけどハードでその分負担も大きい。
個人ではなく全体として魅せる振り付けも多い。

そのひとつにメンバー全員、もしくは数人でやるリフト系の振り付けがあるけどこれまで運動神経のいいユタがリフトの土台をすることが続いていた。

ユタは冗談を混ぜて辛いと言っていたけれど。
実際本当に辛そうだった。
メンバーも表には出さないけどユタを気遣っている。
でもユタが明るく振る舞うから出来るだけ不安や心配は出さないようにしている。

だけど。

ジェヒョンはこうして時々ユタを心配する。
まるで大型犬がご主人を心配して纏わり付いてるみたいだ。

「ありがとうな。大丈夫だよ。」

ユタが笑顔でジェヒョンに答える。
他のメンバーならばここでひく。
ユタは中身が男らしいからあまり同情するのも違う気がする。

それでも。

「ユタ兄。少し温めますか?
タオル持ってきましょうか。」

ジェヒョンはユタを気にし始めるとひかず、出来ることを一生懸命やろうとする。
只聞き分けの良い弟ではなくなる。

僕も気持ちはわかる。
だってユタは肝心なことは言ってくれない。

「はは。
ジェヒョンありがとうな。
いつも世話して貰いっぱなしだな。大丈夫だから。」

ユタが更にやんわりともういい。と言う。

本当は辛いなら言って欲しい。
頼って欲しい。
もっと寄りかかって欲しい。

だけど、言ってくれない。
きっとユタにはユタだけの領域があるんだろう。
誰にだって…僕にだってあるから。

そう思って僕は傍で見守ることにしている。

「ユタ兄…。
じゃあ帰ったら僕にマッサージさせて下さいよ。」

それでもジェヒョンはひかなかった。

「はは。本当に大丈夫だって。気にしなくて良いぞ。」

ユタがもう一度ジェヒョンに線引きをする。
でも無駄だった。

「大丈夫です。腰には触りません。
腰をかばうと背中とか疲れるでしょう?
僕更に上手になったんですよ。
実は誰かに試したいんです。
だからユタ兄マッサージさせて下さい。
兄〜。1時間でいいですから〜。」

ジェヒョンがマッサージをする側なのに何故か可愛い弟全開でユタにお強請りをし始める。

「お前…過保護だなぁ。」

ユタは元々弟達の甘えに弱い。
ジェヒョンのは甘えと言うよりお強請り…いや、もはや強い押しだ。

「へへ。そうですよ。
だから今更遠慮しないで下さい。
試したくてウズウズしてるんですよ。
ユタ兄僕の腕前に驚きますよ。」

もう一押しとわかるのかジェヒョンは益々押している。
本当に忠犬だ。
ユタが嫌がることをするわけじゃない。
でもユタの傍から決して離れるつもりがないのだ。
そして。

「はぁ。そんなに言うなら…頼もうかな。」

ユタがジェヒョンに負けた。

「はい!!任せて下さい。
あ、ユタ兄、水飲みますか?」

ジェヒョンの顔が満面の笑みになる。そして、更に甲斐甲斐しくユタの世話をやきにはいる。

「ああ、うん。」

ユタが苦笑いしてるがジェヒョンはいそいそと嬉しそうに立ち上がる。

「僕、持ってきますね。
あと今日はおやつもあるんです!
食べましょう。」

自分のおやつを口実にしてユタと一緒にいたいんだろう。
僕にはそんなやり方とても真似できない。
弟だからこそできる無邪気な方法だ。

「いや。太るから。」

ユタもやんわり断るが。

「そうです。だからユタ兄も巻き添えです。」

やっぱりジェヒョンはユタの傍から離れようとしないようで切りかえす。
そして鼻歌交じりに水とおやつを取りに行く。

「おいおいw 」

ユタが軽くため息をつく。
でも薄く微笑んでいて決して嫌がってはいない。
こういうことがさらりとできるジェヒョンが本当に羨ましい…。

僕ならとっくにひいているだろう。

ジェヒョンは一人っ子のせいか一人の時間も欲しいと言うが。
誰かと居ることも嫌いではないようで面倒見もいいし、誰にでも優しい。

……いや、少し違うかな。

「はい、ユタ兄。あーん。」

戻ってきたジェヒョンが包み紙から出したチョコレートを自分の手から直接ユタに食べさせようとする。

「今日チョコなんだ。」

ユタはそれに何とも思わないのかジェヒョンに聞く。
これがユタとジェヒョンの関係性だ。
兄と弟が逆転してる。

弟が楽しそうに兄の世話をやき。
兄は当たり前のようにそれを受ける。

「そうです。はい、あーん。」

ジェヒョンが諦めずにさらにユタの口元へチョコレートを近づける。

「ん。あー。」

ユタは抵抗なくジェヒョンの手からチョコを食べる。
メンバー同士だから…ではなく。
このシチュエーションはユタの周りで発生しやすい。
ユタは一人で真剣な顔つきをしている時は誰も近づけないのに皆の中にいるとついつい世話をやきたくなるのだ。

だけど最近のジェヒョンは皆のそれとは少し違う気がする。


僕がボーッとその様子を見ているとジェヒョンはユタにチョコレートをあげた後、自分の指に溶けてついたものを舌で舐めた。
…ユタを見ながらそして薄く笑ったのだ。

その瞬間、僕は落ち着かなくなった。

ジェヒョンは笑顔を浮かべているのだが。
目だけ色が変わったのだ。
いや、大人の表情と言ったらいいのか…。


これまでの弟のような無邪気さや好青年の爽やかな笑顔を見せているジェヒョンではなく。
正直その表情からは何を考えているのかわからなかった。


当のユタは全く見てない。
水を飲んでプハーとか言っている。


確かにデビューをしてジェヒョンは責任感が強くなった。

デビュー前のジェヒョンはマンネの立場になることも多くて可愛い弟という感じだった。
そんな中でもユタとジェヒョンは仲が良くて。
ジェヒョンはユタに懐いていた。
でもあんな表情はユタに向けてなかったと思う。


なんだか見てるこっちがドギマギしてしまった。
ジェヒョンの表情が大人の男性というか…色気…もっと言うと、エロかったのだ。


ジェヒョンは学生の頃から華というよりは艶…色気のあるタイプで女性にモテていた。

でもその頃と今のジェヒョンの表情は格段に違う。
大人びた気がする。
ジェヒョンが急速に大人になっているのかもしれない。


ユタは気付いてないんだろうか。
あんな表情を自分に向けられたら僕だったら同性でも動揺するかもしれない。
ユタはそこまで鈍くないと思うんだけど。




でも…なんだろう。
違和感だ…。



「ん?テヨンも食べたいのか?」

そんなことは伝わるはずもなく、ユタが無邪気に僕に聞いてくる。

「え。」

咄嗟に答えられずにいると。

「ジェヒョン、チョコレートまだある?
テヨンも食べたいって。」

ユタがジェヒョンに貰おうとする。

「あ、いや…」

断ろうとすると

「あ、ありますよ。
珍しいですね。最近体調管理だとか言って甘い物断ってましたよね?」

ジェヒョンがチョコレートの箱毎僕に差し出す。
やはりジェヒョンが自分の手であげたいのはユタなんだろうな…と、ぼんやり思う。
思わずジェヒョンを見返すとそこにはいつも通りの好青年の笑顔。

「いや、いらないよ。
気持ちだけありがとう。」

ジェヒョンが軽く肩をすくめてほらと言うようにユタを見る。

「は?俺の食べるの羨ましそうに見てたのかと思ったわ。
あ!水か。水が欲しいのか?」

ジェヒョンに断ると今度はユタが自分の飲んでいた水を差しだしてきた。

「え、ユタ兄。テヨン兄は…」

ジェヒョンは本当に人をよく見ていると思う。
きっと僕が他人の水は飲まないと知っている。
ジェヒョンの言いたいことはわかる。
だけど僕も少し変わったところがあるのだ。


「ありがとう。」


ユタがくれるもの。
ユタがくれるものは僕にとって特別なものなのだ。
水を受け取り口をつけて飲む。
僕はユタが大好きだ。憧れている。


「…テヨン兄はユタ兄のは大丈夫なんですね。」

ジェヒョンが驚いたのか呟くように言う。

僕は少し潔癖の傾向がある。
もしかしてだからジェヒョンはチョコレートに触らずくれようとしたのかもしれない。

「凄いだろーw
俺は病気を持ってないって繰り返し言ってやっと最近な?」

ユタが何故かジェヒョンに自慢げに話す。
何だかそんな嬉しそうに言われるとくすぐったい気持ちになる。

「へえ。そうなんですね…。」

だけど今度はジェヒョンが無表情になる。

あれ…。い…居心地が悪い…。
別に悪いことをしてるわけでもないのに。

「これでそのうち俺達はしゃぶしゃぶだって皆で行けちゃうな!」

ユタだけ何も気付かないように笑っていた。
ジェヒョンは口元だけで小さく笑う。
僕は曖昧に笑ってその場を誤魔化した。

この違和感に…ユタは本当に気付いてないんだろうか…。






ユタ。
僕は君が好きだよ。憧れてるんだ。



この先、君がもし嫌なめに遭ったときは僕が全力で君の味方になるよ。
君が壊れかけた僕の心を大切に扱ってくれたように。
僕も君を大切にするからね。



ユタ。
僕の友達。


君が笑顔でいられるようにこれからは僕が君の望まないものから君を守るからね。


もし。


君がどんなに親しい間柄の相手だとしても望まないことをされるのなら。
選択しないのだとしたら。
僕だけは君の隣にいて一緒に歩くからね。

ユクリ。
愛してるよ。
君の幸せを願ってるからね。


終わり
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