JACK (Long)


□JOKER
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香水は同じものでもつける人によって
匂いが変化する。

ジェヒョンが教えてくれた。



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JOKER〜Perfume




「時間で匂いが変わるのは知ってたけど。
じゃあ、俺とお前が同じ香水つけても
違うってことだよな?」

ジェヒョンは匂いというものが好きらしく
香水がコレクションのように並べてある。

「そうです。
匂いって面白いでしょ?」

香水瓶の形や色も様々だ。
俺の姉妹も持ってはいたが
自分はあまり興味がなかった。

幾つか香水瓶を手に取ってみる。
何がいいとか俺にはさっぱりわからない。

でも、普段のジェヒョンからは
香水のキツい匂いはなく気にはならない。
体臭で変化ってやつか?

「スゲーな。
こんなにいくつもあってどうするんだ?
俺にはどれがいいとかわかんないなw
ジェヒョンの好きな匂いとかあんの?」

並んでいる香水をしげしげと見つめるが
自分で全部嗅ぐのも面倒だし
ジェヒョンに聞いてしまう。


「気分や服装とかシーンで変えるんですよ。
僕の今のお気に入りは
えーと、これですね。」

ちょうど俺の目の前にあったのが
そのお気に入りだったようだ。

部屋の電気がふと暗くなる。
ジェヒョンがいつの間にか
背後にいて光が一瞬遮られたのだ。

ジェヒョンが俺の肩に片手を置いて
もう片方の腕を俺の肩越しから
伸ばして香水瓶をとる。

肩にジェヒョンの体温を感じる。
やることがいちいち王子っぽいんだよな。
わざとか?
こいつのこういうところモテるだろうな。


「じゃあ、
ジェヒョンのお気に入りの匂いだとしても
俺がつけて臭くなることも有るってことかwww」

なんとなく気まずく感じて冗談を言う。

ジェヒョンは一人で過ごしたり
静かな時間も好きなようで
一緒の部屋にいると静なことも多い。


でも時々モテスキルというか
誰彼構わず王子のように接するから
男の俺でも気恥ずかしくなるときがある。

「なんですか、その発想w
臭くはならないと思いますよ。
少し違う匂いにはなりますけどね。」

ジェヒョンが俺の冗談に小さくクスクス笑う。

メンバーでいるときは大声で笑って
冗談も多くて年頃の少年らしいのに。

ジェヒョンは顔立ちが優しいというか
老け…落ち着いているというか
静かに笑うと
金持ちのお坊っちゃんぽい品があるのだ。

女性にもてそうな綺麗な男だと思う。
そしてどこか王子っぽい。

「ふーん。…つけてもいい?」

ジェヒョンのお気に入りだという
香水瓶を受けとる。

「ええ。どうぞ。」

どんな匂いだろう。
瓶を開けようとしたが

「…ん?
うーーーん。んっ…?」

何故か香水瓶の蓋が開かない。

「どうしました?開きませんか?」

ジェヒョンが俺の手元を除き混む。
背後から近づかれ
更にジェヒョンの体温を近くで感じる。

ジェヒョンはスキンシップが好きだと思う。
そして意外と甘えん坊。
そういうところは弟らしい。

「貸してください。」

俺の手から香水瓶を取り蓋を開けてくれる。

「これ今朝僕が慌てたから
蓋が斜めに閉まったみたいです。はい。」

再び瓶を俺に渡す。

「お前も結構おおざっぱじゃないかw」

俺は普段テヨンとジェヒョンに
男らしい=おおざっぱだと言われる。
ここぞとばかりに指摘すると
ジェヒョンも同意して笑う。

香水を自分の手首につけて
匂いを嗅いでみる。

「どうですか?」

ジェヒョンが俺の反応をじっと見つめる。
何故か目がワクワクしている。

シトラス系の甘酸っぱい匂いが広がる。

「うん、これは結構好きかも。」

ジェヒョンが今度は嬉しそうにふわっと笑う。
自分のお気に入りを誉めてもらえるって
嬉しいんだよな。

「ユタ兄。
首につけないと変化がわかりにくいです。」

ジェヒョンがまた背後から喋る。
自分の耳下をジェスチャーで指す。


「うん?そういうもんか。」

手首につけた香水を自分の耳の下にもつける。
そしてつけてから思う。


…あれ?これって。



「自分の首につけても
自分じゃ匂いがわからなくないかw?」

自分では嗅げないことに気づく。
どうやって人と違うってことがわかるんだよ。

「兄。これ今日僕がつけてます。」

「うん?」

ジェヒョンも同じものをつけている?
だから?

「ああ。そうなのか?
なんかあんまり香水の匂いしないな。」

素直に答えると

「少し時間も経っていますからね。
僕も自分では自分の匂い嗅げないから。
嗅いでみてください。
僕どんな匂いになってますか。」

とニッコリ笑って背後から
俺の肩越しに今度は頭を垂らしてくる。

嗅げってことかw
今度は大型犬っぽくてちょっと可愛い。

ちょうど顔の横にジェヒョンの横顔がきた。
首を後ろに傾けて首の匂いを嗅ごうとする。
すると少し後ろにそる形になり
ジェヒョンの肩に俺の頭がのっかった。

いつの間にか思っていたよりも
密着していたことに驚く。


なんだ…これ…。
恥ずかしいかもしれない…。


しかし、いちいち動揺するのも
こっちだけ意識しているようで
恥ずかしい。
できるだけ平常心で

「確かに。
瓶から嗅いだより草っぽい匂いがする。」

何もなかったように答えて姿勢を直す。

「草っぽいってw
ユタ兄、なんか酷いです。」

ジェヒョンが苦笑いする。
やっぱりこいつ無意識なのか。
勝手に照れて変な空気作らなくてよかった。

「ユタ兄は…?」

「ん?」

今度はジェヒョンが俺の首もとに顔を寄せる。

前の記憶が甦る。

以前、
ジェヒョンが俺の匂いを嗅ぎたいと
ふざけてきたとき
それに驚いた俺が突き飛ばして
ジェヒョンに傷を作った。

ジェヒョンが俺の首にすり寄ってきて。
首が弱くて耐えられないのもあったが、
なんとなく不安になったのだ。

ジェヒョンが決して無理矢理
押さえつけたわけではなかったのだろうけど。

とても落ち着かない気持ちになったのだ。

俺もサッカーをしてたから勝ったときなどの
男同士のスキンシップには
それほど抵抗はないつもりだ。

だけど
韓国や中国の親しくなったときの距離感は
その比ではない気がする。

自分が弟分のときは単に甘えればいいのだが
ジェヒョンのように俺より大きい男が
盛大にに甘えてくると正直どうしたらいいか
分からなくなることもある。


うーん、でもウィンウィンは平気なんだよなぁ。
背じゃないとすれば愛嬌か…?


とにかく気を付けないと。
只のスキンシップで怪我させるなんて
二度とあってはいけない。

驚いて体が反射的にピクリと動いたが堪える。

「おい。近い。
お前は距離が近いんだよ。」

また勢いでジェヒョンに傷をつけないように
俺は上半身だけでジェヒョンから離れようとした。
その時

「兄!危ない!」

ジェヒョンの慌てた口調が聞こえると同時に
俺の後頭部にジェヒョンの手が包み込まれて
強引に引き寄せられた。

「おわっ!!」

手は使わず上半身だけで身動きをしたので
勢い余ってジェヒョンの胸に飛び込む形になる。
ジェヒョンの体温と匂いに包まれる。


こいつ、やっぱり俺よりガタイがいいんだよなぁ…。


「ユタ兄、
いきなり大きく動いたら危ないですよ。
頭をぶつけるところでした。」

体勢もそのままにゆっくり振り向くと
確かにジェヒョンのいった通り
二段ベッドの柱があった。

俺の勢いだと恐らく
ジェヒョンが庇ってくれなければ
結構派手に頭をぶつけたんじゃないだろうか。

「驚かせないでください。
本当にびっくりしましたよ。」

ジェヒョンがため息をつく。
俺の頭をまた自分の胸にもう一度抱き込む。

本当に慌てたようで
心臓がドキドキする音まで聞こえる。
結構早くなっている。

「ご、ごめんな。」

そんなに驚かせたのか。

そういえば普段は穏やかなジェヒョンでも
イライラするのだが。
大抵誰かを心配してというパターンが
多い気がする。

俺は何度かジェヒョンを
不機嫌にしたことがある。

「ぶつけてないですか?大丈夫ですか?
ユタ兄。」

ジェヒョンが俺の顔を除き混んで
俺の後頭部を手でなでる。

でた。王子スキル。
本当、こいつといると時々むず痒くなる。


ジェヒョンは俺に
『ウィンウィンに対して過保護』だというが。
ジェヒョンも外国人の俺とウィンウィンに対して大分過保護だと思う。



「おう。大丈夫だよ。ありがとうな。」

さりげなくジェヒョンの胸から脱出する。

「良かったです。
で、ユタ兄の匂いは?」

しかし、脱出したつもりが
ジェヒョンはニッコリ笑ってそのまま
俺の首筋の匂いをもう一度嗅ぎにくる。

髪の毛と息が首にあたって…
く、くすぐったいwww

「ジェヒョン、くすぐったいんだけど。」

「今度は僕の番ですよ。
ユタ兄、ちゃんと嗅がせてください。」

両肩ともしっかりジェヒョンに抑えられて
動けない。

俺は脱出を諦めることにした。

俺が動くとろくなことがないし。
そのうち飽きるだろう。
大型犬ジェヒョンに好きにさせることにした。

「…で?臭い?」

棒読みで訪ねるが
何故かジェヒョンは俺の首筋から中々離れない。

「いいえ。
まだ香水そのものの匂いが強いですけど
いい匂いです。
ユタ兄がつけると
少し甘くなってる気がします。
あの香水。」


「へー。そうかー。」

更に棒読みで答えたが
まだ俺の首から頭を上げない。
本当に犬だ。

「は〜。
やっぱりユタ兄の匂い好きです。
ずっと嗅いでたい。」

やっと顔をあげたと思ったら
満面の笑みだ。

…なんかこいつのことを王子だとか
思ったことがアホらしくなってくる。

こいつは只の匂いフェチの変態大型犬だ。
そう理解する。

そしてジェヒョンが

「ユタ兄、今度一緒に寝ましょう。
ユタ兄の匂いを嗅いで寝たら
僕、安眠できそうです。」

と無邪気に言ってきた。

……………こいつ。
匂いを嗅いで安眠???
なんか本当に残念なやつだ…。



だいたい俺と寝てどうするんだ。
男二人なんて暑苦しいことこの上ない。
ジェヒョン汗っかきだし。
俺は寝相が悪いw

「はぁ?
ジェヒョン…お前やっぱり変態くさい。」

正直に断る。

「なんでですか!?
僕、知ってるんですよ。
ウィンウィンとは一緒に寝ましたよね!?」

ジェヒョンが食い下がる。

おいおいおい。
俺の中で
ウィンウィンとジェヒョンじゃ全然違う。

ウィンウィンは可愛いんだ。
それこそ俺の癒し。
兄弟で友達でヒヨコ。

でもジェヒョンじゃ…
ジェヒョンを上から下まで見る。


「うーん。なし!!!却下。」


「だからなんでなんですか?
兄!僕だって弟ですよー!
兄が寝相悪くても耐えて見せますから!」

さりげなく失礼だ。

さっきまでの気まずかった雰囲気は
かき消された。

拗ねるジェヒョンと笑う俺。
俺とジェヒョンはこうでないと。






ジェヒョン、
無駄に王子スキル発動してんなよ。
いや、匂いフェチは隠している方がいいのか?

同じクチルズなのに
何故か可愛がれないこの関係性は
俺も不思議だと思っている。

でも最近、やたら王子ぶって
弟らしくなくなった
お前のせいだからな。

兄ちゃんはお前に合わせてるんだからなー?
この大型犬め。

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