★ミラプリ仕官部屋★

□シミアン@
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姫様にお仕えするようになって早2週間。
慣れない環境下でありながら懸命に頑張る姿は、
主人としてというよりも、
ひとりの人間として尊敬している。

姫様専属の執事として、
自分はいったい何が出来るんだろうと考えた時、
「家族のように接すること」だと。

国の行く末を案じていらっしゃるローランド国王陛下の
咲紀様への期待もかなり大きい。
ゆえに、厳しいことをおっしゃられることも多い。

あと2週間で叙任式をすることになっており、
伴侶を決めよ、と陛下から強く言われていらっしゃる。

最近特に、笑顔が少なくなって来て、
姫様が姫様らしく過ごせてないのではないかと
気になっているところ。
どうすればいいのだろう…何が出来るのだろう。

・・・・・

「あぁ、つかれたー」
ぐったりとテーブルに伏せていらっしゃる姫様。

「さぁ姫様のお好きなパンツタイムですよー」
そう言って、彼女の好きなアールグレイティを入れる。
今日は特にぴったりのお菓子も準備した。
ささやかながら、姫様に寛いでもらいたい。

「…美味しい〜」
私のギャグも華麗にスルーしつつ、
”美味しい”と笑みを溢される姿を見てホッとする。

中庭は彩り豊かな花々が咲いている。
姫様はお庭の花々を眺めて、
ぼーっとティータイムを満喫されている。

『少しでも癒されれば良いですね』

ポットのお代わりをカップに注ぎつつ、
つかの間の休息を見守る。

ふと、護衛のディルクに目を向けると、
彼もまた、姫様の様子が心配なのか、
温かい目を向けて、彼女と笑い合っている。

咲紀様にはたくさんの味方がいる。

その事を彼女が感じ取ってくれると良いのだけれど。

・・・・・

今日は朝からテーブルマナーやダンスと
プリンセスレッスンに忙しい姫様。

レッスン後、
自室で休息を取られている咲紀様へ
夜の会食をお知らせするため、扉をノックする。


コンコンコン…

「?」

返事がない。
扉の前で護衛をしているゼルと共に
そっと扉を開ける。

2〜3歩歩みを進めるも
ソファにもベッドにも姿は無い。

ゼルも警戒態勢を取って部屋に入る。

さらに奥に視線をめぐらせると…
バルコニーにその姿はあった。

「姫様?」

ゼルに『大丈夫』と合図を取り、
扉まで戻ってもらう。

微笑みながら、
じっと…どこかを見つめる咲紀様。

その優しい視線の先を見ると、庭園の先の門で
騎士団のメンバーと話しているディルクの姿があった。

『もしかして…?!』

姫様に気がつかれないように、
そっと扉まで戻る。

「何かあったのか?」
扉の前でゼルに問われるも
首を横に振る。

「姫様が私に気がついて下さらないので
 もう一度やり直すだけですよ、ゼル」

「それなら良いが…」
何となく訝しげな顔をするゼル。

「…パンパカパーンツ!姫様〜お食事の時間ですよー」
殊更大きな声で来訪を伝える。

ハッとしたように、バルコニーから姫様が戻られる。
「…もうそんな時間ですか?」

パンツには全く触れず(苦笑)
びっくりした表情の咲紀様。

「本日は貴族の皆様とご一緒に会食でございます」

「…わかりました」

”貴族の皆様と会食”という言葉に
重苦しい表情を見せる姫様。

これも陛下に伴侶選びを迫られているからだろう。
この会食も、その一環として設けられた場であるのは
明らか。

「お戻りの際は、シミアン特製の
 ナイトパンツブレンドティーをご用意しますから。
 さぁ会食に行きましょう〜♪」

会食の後の自室では
せめてリラックスしていただけるように
ほんのりブランデーの香るナイトティーを
ご用意して差し上げようと考えながら、
姫様を会食会場まで案内する。

・・・・・

姫様が食事をしている間に、
2週間後に迫った叙任式の準備を進める。

招待客への当日のおもてなし方法。
…特に諸外国からの来訪者へは
それぞれの外交担当をしている
貴族の方々から聞いた内容を
おもてなしへ取り込んでいく。

当日の運営スタッフの配置や
叙任式後の晩餐会のメニューなど
やることはたくさんある…。

「しかし…」

『姫様の幸せを思うと…
 素直に準備が出来ませんねぇ…』

先ほどの様子から考えれば
少なからず、ディルクに想いを寄せているのだろう。

彼は騎士団の副団長でありながら、
気さくで明るく、表裏なく接する姿は、
急に、プリンセスとしての重責を担うことになった
姫様にとって、救われる気持ちが大きいのだと思う。

しかし叙任式で選ぶ伴侶は、プリンセスの位にいる彼女を
補佐することが出来る上級貴族である4名のうち1名。
いずれも家名に劣らない外交手腕を見せている。

だから、伴侶候補にディルクを選ぶことは出来ない。

『あと2週間か…』

カレンダーを見て、ため息をつく。
『姫様の泣き顔は私もみたくありませんよ…』

つづく。

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