★ミラプリ仕官部屋★

□ゼル@
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「あなたはプリンセスという自覚が足りない!」

今日も咲紀様のレッスンは
厳しく続いている。

陛下からしっかりと教育するよう
仰せつかったヴィンセントも
この国の女王として活躍出来るよう、
彼女に期待しているが故
厳しくするのだろう。

彼女がこの王宮に現れ
護衛をするようになって早2週間。

これまで異国の地で暮らしていたというプリンセス。
王族としての教育は受けておらず、
何もかもが初めてという咲紀様。

連日のレッスンに疲労の色は見せても
へこたれずに頑張っている姿は尊敬に価する。

『だからこそ、しっかりとお護りせねば!』

クリステン王国の騎士団団長として、
責任を持って咲紀様をお護りしたいと
心から思っている。

・・・・・

夕食を終えられ、
シミアンと共に自室に戻るプリンセス。
その後ろに控えつつ護衛を行う。

「咲紀」

ふと廊下で、ルカ殿に呼び止められている。

「シミアン、俺がプリンセスを部屋まで送る。
 先に戻っていろ」

「かしこまりました」

「ゼル、俺はプリンセスと話がある。
 少し離れていろ」

「はっ!」

ルカ殿の言いつけ通り、距離をとった場所で控える。

何を話しているのかはわからない。
が…咲紀様の表情が曇り始めた…。
言い争っているような雰囲気もある。

『!!』

咲紀様が突然、
ルカ殿と離れて歩き出した。

急いで彼女を追いかける!

ルカ殿の横を通り過ぎる時、
横目で彼を見ると「くそっ!」と
壁に拳をぶつけている。

・・・・・

廊下の角を曲がったところで
プリンセスに追いついた。

俯いたまま歩く咲紀様。

「危ない!」

ふいに開いた扉にぶつかりそうになるプリンセス。
とっさに彼女の腕を掴み、引き寄せ、
くるっと背を向け
扉と彼女の間に身体を入れる。

バンッ!
ガシャン!

背中にやや衝撃はあるものの
大したことはなかった。

「も・・も・・申し訳ありません!」
扉から出てきた新人らしきメイドがひたすら謝る。

「大事が無くて何よりだ。
 ただ次回からは気をつけてほしい」

そう告げて、下がらせる。

「プリンセス、お怪我はありませんでしたか?」
引き寄せていた身体を離して問う。

「…大丈夫です、ありがとうございます」
浮かない表情のまま、そう答える咲紀様。

「お部屋までお送り致します」


そうして無事に彼女を部屋まで送り届けた。
部屋の中ではフローラとマリー
彼女の専属のメイドが湯浴みの準備をして待っていた。

「では私はこれで失礼致します!」

深々と礼をし、彼女の部屋を退出する。
あと10分もすれば、夜当番のディルクが来る。

『…最後まで浮かない顔だったな』

これまで、どんなに疲れていても自室に戻った後は
安堵の表情を見せていたプリンセスが、
今日は表情が曇ったまま、俯いたままで
護衛時間は交代となった。

『何かして差し上げられることはあるのだろうか』
ひとりの人間として、気にかかる。

『いや、自分は騎士団長としてお護りすることが役目。
 咲紀様と個人的な接触は避けるべきだ』

プリンセスとは、あくまでクリステン王国の騎士団長として
接する機会を得ているだけであり、身分も違う。

自分のようなものが何か出来るなど、
思ってはいけないのだと結論付けた。

・・・・・
「団長、交代の時間です!」
「よし!ディルク、引き継ぎだ!」

ディルクが部屋の前に到着し、引き継ぎを行う。

「今日のスケジュールは滞りなく終わった。
 明日朝のスケジュールは確認したか?」

「はっ!明日は朝から国王様と謁見があるそうです」
「そうか、では国王様の謁見終了後にヴォルフと交代だ」
「承知しました!」
「それ以降のスケジュールは、俺が確認し、
 ヴォルフに伝える!」
「お願いします!
 団長…プリンセスのご様子はどうでしたか?」

ディルクが心配そうに尋ねる。

『側で護衛をしていて、気になる気持ちは分かる…』

しかし。
あくまで俺たちは護衛役だ。
個人として踏み込み過ぎても良く無い。

「…特に変わった様子はない」

そう伝えると、ディルクはホッとしたように
「そうですか…」とニカっと笑う。

「引き継ぎは以上だ!後、頼んだぞ!」

そうディルクに告げて、騎士団本部へ向かう。

つづく。


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