Long story

□Family
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あの日以来、
「僕」はワンオクの1人として
沢山のライブに出るようになった


練習はもちろんメンバーとやるのだが、特にギターの亨さんといることが多かったように感じる。というかダントツに多いんだろうな。

そして今日は休みだが、
これからまた亨さんと
家でギターの練習をするつもりだ。
そしてここは亨さんの家



「亨さん、起きてください」


「んー………誰………
ああ、蓮か…




…ちょっとまて、蓮???
お前一体どこから
家に入ったんや?」


「そんな不審者を見るような目で
見ないでください
亨さんが家の鍵開けっ放しだったのが
悪いんですよ」


「あー…俺またやったか…」


「東京は鍵かけなきゃ危険ですから
気をつけてください」


「はい、気をつけます」




そんなこんなで亨さんを起こし
軽く朝食を食べてから
ギターの練習を始めた。







「蓮、ここはどうやるん?」


「ここはこうですよ」


「ああ、ありがとな」



亨さんの匂いがするなー
なんて考えながら
黙々とギターの練習をした。



「亨さん、ここ、
いつも出来ないんですけど
どうしたらいいですかね」


「あー、それな、こうやるんやで」



説明するために、
隣に座っていた亨さんが
さらに距離を縮め、
広い部屋で体が密着した。

僕が女だと気づいたら
どうなるんだろうか



「…で…こうや、って、聞いてるか?」


「あ、聞いてます」


「うそつけ」


「すみません、
綺麗な手だなと思って」


俺の手か?って亨さんは
自分の手をまじまじと見つめ
その後また僕に視線を戻す。


「ただごついだけやろ

蓮はほんまに、細いな
女みたいやわ」


今度はそう言って
僕の手を掴んでまじまじと見つめた。


(女ですから)

そう心でつぶやいた。

すると突然亨さんが
真剣な目つきで僕の方を見た。




「蓮、そろそろ敬語とか、
やめんか?
亨さん、も、だめ。
亨って呼んでや」


「なんでですか、急に」


「急やないて、

なんかな、俺らと蓮の間に
壁が出来てる気がするんよ

俺らはバンドメンバーであり、
家族でもある

俺はそんな壁許さへん」



「家族……ですか」



確かに一緒に活動し始めて
半年くらいたったのかもしれない

でもやっぱり、
後から入った僕がみんなにタメ口で
亨さんを呼び捨てするなんて


図々しいんじゃないかって怖いんだ


少し俯いて考えてると

不意に視界が暗くなって
なんだろうと思ったら
僕は亨さんに抱きしめられていた



「何をそんなビクビクしてんねん

俺がええって言ったらええんや
みんな、タメ口つかったり
呼び捨てで呼んだりして
怒るとでも思っとるんか?

あいつらはそんな
心狭くないから、

むしろな、メンバーで、家族やのに
いつまでも距離ばっか作っとる方が
俺ら心配なんやで?


だから、そんな心閉ざさんで

何でも、受け止めたるから、俺が」



温かかったのは、
抱きしめられてたからかな

心の中で何かが解けた気がした



「ありがとう、亨」



そう呟いて抱き返せば
亨は「よくできました」って
頭を撫でてくれた。








(ほら、練習や。貴寛って言ってみ)

(た、…貴寛)

(次、良太)

(良太)

(次智也)

(ともくん)

(ちょっと待て?)

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