毎日楽しく団子を食べよう

□7.忘れない2日間
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太宰sid



彼に連れられて、私は広い檻の中で過ごしている

両手首を天井からぶら下がる鎖が縛り、膝立ちの状態

私が入っている檻が置いてある部屋はとても広かった

目の前には明るい真っ白な部屋があり

10メートル先には真っ白なベットがあった

『ねえ太宰君。俺は、決めたよ』

窓もない、明かりはずっとついていて

真っ白な部屋で、扉とベットしか見えない

『だから、ちゃんと殺しに来てね』

ベットの上には既に身動き1つない彼が横たわっている

あの3日間

私にとっては本当に地獄のような日だった

彼が目を覚まさなくなってから

私の中には怒りと憎しみと悲しみが渦を巻いて理性を呑み込んだ

この鎖だってすぐに抜け出せるし、檻からも逃げれる

すぐに彼の傍に行って、その身を力いっぱいに抱きしめては

彼に言いたいことがある

「私も一緒に連れて行って」と



1日目

目の前には彼がいて私を見ていた

?「おはよう。太宰」

部屋の逆光で目が慣れておらず、彼の声しか聞こえない

太宰「ここは...」

私は自分の部屋で眠っていた

何があったのか覚えていない

いつも通り帰ってきては氷月君のご飯を食べて寝たはずだ

おぼろげな頭でどれだけ考えようとも分からない

?「ああ、その鎖ね。外したら罰ゲームがあるから外さない方がいいらしいよ。あの人が言ってた」

「あの人」と紹介され、彼の後ろから金髪の男がやってきた

佐賀「おはよう太宰君。手荒な真似をしてしまって申し訳ない。私はこの組織のリーダーである佐賀宏昌と言う」

金髪の男、表情は黒い笑みを浮かべており

その高身長から威圧を少しだけ感じる

森さんが本気で怒った時とどっちが怖いか聞かれれば

圧倒的に森さんであり、この人の威圧は身長だけで賄っている様子だ

佐賀「彼は私がスカウトした、と紹介はしなくてもいいかもしれないが、あえて言っておこう。彼が黒河永久」

太宰「!」

ようやく明かりに目が慣れた所で、彼を見る

声は一緒だった

容姿も立ち姿も一緒で

分からなかった

けど、本当なのだろうか

黒河「太宰。俺の頃を忘れてくれたのか?嬉しいよ」

普通は違うだろ

そう言いたくなるのに、驚きで声の出し方を忘れてしまって

自分の言いたい事は全く言えずに話は進んでいった

佐賀「さて、君がここに来てもらった理由だが、もう分かるよね?君の異能力が僕の作戦の邪魔をすると思うからここに連れてきたまでだ」

太宰「作戦?」

佐賀「世界のリセット。理不尽な世界からの解放と、愚かな人間の抹殺。これが完了すれば世界は救われ、よりよい世界が目の前に現れるだろう」

馬鹿々々しい

そんな事をして意味がない

佐賀「私の異能力を使えば何ら問題はない。だが君の持つ異能力が発動してしまえば私の作戦も台無しだ。ここで君を飼い、全て終わった後に解放しようと思っているよ」

ようは「邪魔だから閉まっておく」と言った感じだな

佐賀「作戦の開始にはまだまだ時間がかかる。それに試運転もしないといけない」

太宰「そして、その試運転として横浜、ね」

佐賀「察しが良くて嬉しいよ。黒河は私が雇った護衛だ。私の作戦に賛同しここに居る。まあ例え裏切っても無意味なんだけどね。彼には既に細工がしてある」

黒河「それを俺の前で言っちゃうのか?」

佐賀「言ったところでどうにも出来ないさ。それに、君はちゃんとした護衛を務めてもらうからね」

黒河「はいはい」



話が終わると佐賀と名乗った男はすぐに出て行ってしまった

だが、私は彼の作戦よりも目の前にいる彼について知りたい

黒河「太宰」

檻の目の前に来た彼は今にも泣きだしそうな顔をしている

どうして?どうして君がそんな顔をするんだい

黒河「太宰。ゲームをしよう」

太宰「ゲーム?」

黒河「君が勝てば世界は救われ、危険分子は完全に消滅をする。俺が勝てば世界は終わる。このままではいけない。俺はこの作戦に賛同した。それは間違いであって間違いではない」

太宰「キミの思考が分からない。教えてくれ。私に、キミがどこで生きていたのかも教えてくれないか?」

黒河「俺は。俺は元から、死んでいるよ」

太宰「...え?」

檻の外から伸びてきた腕

私の頬を壊れ物でも扱うかのようにそっと触れてきた

これが死人の手?

一体、どう言う事だ?

黒河「俺は既に死んでいる。体を借りているんだよ」

太宰「借りている?」

黒河「そう。兄さんにね」

太宰「!」

全ての辻褄が合わさった

そうか。だから彼は知っていても途切れている

太宰「君の、異能力は?」

黒河「俺の異能力は「割り込み駐車」。相手の意識の中にもう1人の俺を作り出し、相手の身で好き勝手出来る異能力。デメリットは死んでからしか発動しない事さ」
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