いならなかったモノ

□00.受け入れない真実
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学校は森の中

東京のど真ん中でもあるのにも関わらず、そこには自然が溢れていた

右腕、両足、首、頭と体の至る所に包帯を巻いた少女は学ランに付いているフードを深く被った

この学ランは特注で作られているため、黒いフードの後頭部には5センチ程の横の線が引いてある

そこは少女の長い髪を出すための穴である

普段使わない時は小さなスナップボタンが付いてるため、穴を閉じる事も出来る

少女は風で飛びそうなフードをさらにかぶり直し、お気に入りのスポットを目指した

その足取りはとても重く、踏み出す1歩も小さい

しかしながら少女は目的を達成するまで歩みを止めなかった

固いコンクリート、踏めば形の変わる軟らかい土、むき出しになった木の根

それらをゆっくりと丁寧に避けながら進む

水の音が聞こえ、足元が石に変わり、森の中を抜ければ

少女の目指したお気に入りのスポットに辿り着いた

?「やっぱり、此処に来ると思ったよ」

あと数センチで水が足に付きそうなギリギリの場所

「最強」と言われている五条悟が優しい笑みと声音で少女を待っていた

?「部屋の中はつまらないんだ。だらか脱走してきた」

五条「「人は見かけによらない」とよく言ったものだ。本当に見た目によらずお転婆娘だね」

包帯を巻いた少女は五条に近づき、見上げた

?「僕が自分の事を「大人しいよ」と言った覚えなんかはないよ」

綺麗な声音で優しい言葉

五条はそんな少女が恋愛対象として好きである

五条「君はただでさえ呪術が効きにくい体質なんだ。大人しくしていなければ怪我が残っちゃうよ」

?「僕は構わない。それは未熟であるが故の証拠。弱いからこそ起きてしまった事なんだ。だから僕にはこれがお似合いさ」

弱々しい笑みと共に大きな岩へ腰かけ、長い髪を風に乗せた

清流を連想させるような水色の癖のない髪

指を通せば指の間から零れ落ちそうなくらいに手入れされていた

五条「僕は君を弱いとは思わないよ。僕が一度も君から格闘で1本を取った事がないからね」

?「でも此処は呪術を学ぶための専門学校。呪いを祓うための術がない僕は「最弱」の存在。買われているのは「格闘術に呪い」を乗っける事が出来るから」

強い風に少女の身体が傾くと、すかさず五条が隣に座り倒れそうな少女の身体に腕を回しながら

フードを取り、その長く綺麗な髪を取り出す

五条「そうかな?僕は君の呪術は気に入ってるよ。「1人」では何も出来ないけど、「2人以上」ならなんだって出来るからね」

?「でも現実は「1人」での派遣だよ。僕の呪術は役に立たない」

少女は呪術うまく使えない訳ではない

ただその呪術が個人戦では意味がないものなのだ

格闘術に優れた少女は拳や蹴りに負のエネルギー「術式順転」を乗せ、呪霊を殴っては祓う

少女は自身の中にある呪力が多く、誰よりも上手に扱えるが

少女の精神的な問題や生まれながらに持ってしまった体質のせいで、身体から離れた呪力を操る事が困難である

そのため誰よりも格闘術を極めた

?「「宝の持ち腐れ」何回言われたのかも忘れちゃったし、どうでもよくなってしまった。ねえ五条。僕って「イカレテル」かな?」

綺麗な瞳はしっかりと布で隠された五条の目を見ていた

五条「相当「イカレテル」よ。大丈夫。君よりも僕の方が「イカレテル」さ。氷月」

氷月と呼ばれた少女は立ちあがり、川の前に立つ

五条へと振り向いて

『ねえ五条。ここで包帯全部取って川に入ったら、怒られるかな?』

無垢な笑みで言うもんだから、五条は思わず大笑いし

それを見た氷月もクスクスと笑った

五条「君が怒られるのは目に見えてるけど、それだと僕まで共犯者で怒られる。それは面倒だからやめてくれないかな?」

『うーん、どうしようかなー?』

わざとらしく考える素振りをし、その姿をみた五条は肩をすくめた

五条「なら、何をご希望かな?」

『ベットまで運んでくれないかな?僕、歩き疲れた。嫌ならいいよ、此処から頑張って戻るけど、五条の服の端っこ、掴むからね』

「それは困った」笑みと共に放たれた言葉

少女の身体を意図も容易く抱き上げる

『はい。これで共犯』

五条「そうだね。お姫様」

少女の身体に負荷が掛からないよう、静かに歩き始めた

五条「僕は明日から任務でいないけど、君は無茶をせずに待ってるんだよ」

『分かってるよ。こんな身体で任務行っても「死亡」扱いさ』

五条「そうだね。ま、氷月の事だ。すぐさま殴り飛ばして終わりかもね」

「ヒドイなー」クスクスと腹筋を使って笑うと怪我が痛み、少し苦しそうな表情を浮かべた

氷月の任務は成功に終わったが、その代償は3日間眠るまでの大怪我を負っており

目覚めてすぐに保健室から脱走した

見舞いに来た五条は氷月を探すよりも、氷月がよく現れる所に居た方がいいと判断し先回りしていた

氷月が眠るまでベットに腰かけていた五条も朝日が昇る頃には何処にもいない

任務で入れ違いなんざ、当たり前

1週間後、任務から帰ってきた五条は耳を疑った


















































白川氷月

任務中にて行方不明、のちに死亡と判断された
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