いならなかったモノ

□01.未知数が未知と希望を呼ぶ
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学ランを着た青年が校舎から出て行く

その背後には背が高く、白髪で布で目を隠している男性が付いて来た

伏黒「先生。いつまでついてくるんすか?」

五条「うーん。そうだねー」

可愛い後輩の質問をはぐらかしながら五条は普通に普段通りに過ごす

途中、可愛い後輩が任務に行く姿を見送り五条は踵を返してはとある場所に向かう

木々が生い茂る森を抜け、小さな河原にやってくる

五条の知る過去では、驚いた表情をした「少女」がよく振り返り

笑顔で五条の名を呼んだ

五条「氷月。君は本当に死んでいるのか?」

誰もいない場所で水の流れる音に耳を傾けながら呟いた言葉

五条の恋人だったら微笑みながら「僕は此処だよ」と言ってくれるのを期待していた

叶わない恋だった

「守る」と言った、「行くな」と言った、「待ってろ」と言った

だが上の方々は怪我の治療すら出来ていない彼女を無理矢理任務へと駆り出し

行方不明、見つからなかった身体は死亡扱いされた

胸糞悪い以外の言葉は見つからなかった



小さな依頼で新幹線に乗っている伏黒恵は、先ほどの先生について考えていた

五条悟は「最強」であるが故に時々女子生徒から「彼女」や「恋人」に関しての質問を受ける

その時は決まって少し影のある笑みで「内緒」とだけ言う

医務室にいる先生「家入硝子」に聞くと決まって「あいつの女事情には口を出すな」と言われる

伏黒が聞くわけじゃない、時々別の生徒が利用している時に嫌でも耳に入る距離にいてしまうからだ

そんな伏黒も任務へ向かう少しの時間に一度だけ聞いた事があった

興味本位でもあるが、丁度五条に対してイライラしており

何か情報が聞ければ、相手を小馬鹿にする発言が抑えらるのではないかと思ったからだ

伏黒「五条先生。先生には好きな人でもいるんですか?」

五条「あれれ〜?人の恋路を聞いちゃうの〜」

伏黒「ッ」

イライラしてる所にさらに追い打ちを掛けるようなふざけた声音で言う五条にボルテージは上がるも

五条「そうだねー。...居たよ。昔ね」

過去を思い出すその表情はいつもでは絶対に見られない程の優しい笑みで言った

伏黒「...告白。しなかたのですか?」

五条「告白する前に、死んじゃったよ。無理に無理を重ねてね」

伏黒「!、すいません」

人を煽るような声音でも、陽気な声音でもなく

本当に故人を思うような、そんな弱々しい一面を見た

伏黒は珍しい先生を見てその日の任務は無事に終わった




五条は東京都内を歩き色々な所へ赴く

新入生の腕試し用の呪いの気配がある建物を探し

観光スポットから高層ビル、霊園の傍にある

今は使われていないような小さな廃ビルや公園等々

電車に乗ってはいい所を探し、メモ帳にメモを取る

昼を過ぎた辺りで昼食を取ろうかとチェーン店に入ろうとした時

五条「...え?」

路地裏に入っていく、見覚えのある髪と学ランが見えた

膝裏まで伸ばされていた、水色の髪

忘れるはずもない、忘れたくとも忘れられない、好いた相手の髪だ

路地裏に入った瞬間、その人物は学ランに付いているフードを深く被り

その特徴的な長い髪をフードの穴から出す

目を奪われた人物を追い掛けるように路地裏へ入った

幾度目かの曲がり角を曲がると

そこは五条が本日調べたばかりの今では使われていない小さな公園がある場所だ

あそこは都内でもかなり強い呪霊が住み着いているため数時間後に祓う予定だったが

?「あ...」

公園の目の前を無防備に歩いていたその人物に向かって呪霊が飛び出してきた

まるで「格好の獲物」のように感じたのだろう

五条の見立てでは3級、その呪霊が体当たりしそうな所で

五条「!」

助けに入ろうとした五条は目の前の人物が術式を使った事に気づいた

呪力は感じられなかった、それどころか非術師同然の一般人が術式を使ったのだ

?「すいません。僕はあなたに用はありません」

小さなトイレの壁にめり込んだ、凍結された呪霊はすぐさま灰のようになり風に飛ばされながら消えていった

遠くからであまり声は聞こえなかったが、横顔や声のトーンは五条の探していた人物と「似ていた」

しかしながら「彼女」だと断言出来る部分が存在しなかった

そして五条の「眼」に映った、公園の呪霊が飛び出してくる所を

?「......?」

歩き始めた瞬間、風を感じた人物は足を止めた

いつの間にか人物の右側に立ち廃病院を向いている背の高い男性がいたからだ

五条「全く、相手にもされないからってすぐに襲うのはよくないぞ」

公園から飛び出してきた呪霊に五条は呪力をただただ飛ばしただけである

呪霊の大きな胴体には大きな穴が開き、その呪霊は消えていった

この小さな公園は綺麗に払われた

五条「君、大丈夫かい?」

?「はい、ありがとうございます」

五条「......」

振り向いて表情を見た

身長と顔は本当に彼女そっくりだった

目や髪の色は全く同じ

ただ大きく違うのは、あの時の「少女」ではなく

「少年」である事だ
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