いならなかったモノ

□01.未知数が未知と希望を呼ぶ
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呪霊を吹き飛ばした氷月の身体がグラリと大きく揺れる

そのまま地面に片膝を立て、胸を押さえて大きく咳き込む

脳の情報処理が追いつかず、過呼吸に陥ってる

五条「変わるかい?」

五条は自分を非情だと思ったが、何処か確信があった

「このまま戦えば特級クラスにも、勝てる」と何処か自信があった

『まだ...やらせて、ください...』

フラフラになりながらも、立ち上がる姿を見て

初めて任務に行った時の彼女の事を思い出す

彼女も負けず嫌いで、未知の相手に試行錯誤しながら、自分にしかない呪術で戦い続けた

効かないなら考える、何が足りないのか、何を見落としているのか、何を間違ったのか

その面影が、彼にはあった

誰にでもある物じゃない、彼女しか持ち合わせていない、彼女の「背中」を感じる

そして氷月は考える「結界モドキ」から「強力な結界モドキ」が完成した事により

相手に光(呪力)をぶつけて凍らせる威力も上がっているのではないか、と

左腕と左手だけで今まで呪力を使ってきたが、今の戦いで両手が使えると学ぶ

そしてそれが何処まで有効なのかが、今の彼にとっての未知

メキメキ、コロコロと穴の開いた廃病院から右腕を凍らされた特級呪霊が歩いてやってくる

そこには先ほどまでの「戦闘を楽しむ」表情ではなく「相手を確実に殺す」表情をしていた

『そうか...、「威力」』

右腕を添える事で呪力をより多く使って強力な術式を使った

それを今までの容量で人差し指に呪力を収縮しても、必ず容量が溢れて暴走する

ならば

近接へ持ち込む呪霊の手足には呪術が勿論付与されている、先ほどの「強力な結界モドキ」を使うにもまだ「完全」に完成されていない

土壇場で出来た呪術が都合よく2回目も成功する確率は少ない

呪霊の多彩な近接攻撃に氷月はその動体視力と瞬発力で避け、当たりそうな攻撃には一時的に手足に呪力を流していなしていた

そして

相手の連続攻撃の中で必ずしも強力な1発がやって来ている事を判断した氷月はそれに合わせて

相手の攻撃を完全に格闘技で弾き、相手をよろけさせ

『っ!』

相手の腹に両手を添えて呪力をぶつけた

隙を突かれた呪霊は天へと高く飛ばされ、その間に氷月は「相手を祓う」ための術式を展開させる

左手を前に、右手で左腕を掴み、左手に呪力を溜め込む

右手を退け、左手を握り、右肩に持ってくる

右肩に左手を持ってきた瞬間、より左手の呪力を圧縮するかのように握る力を上げ、人差し指へ移動させ

天で哀れに舞っている呪霊に向けて、白に近い水色の球を当てる

当てた瞬間金平糖のような形で呪霊は氷の中に確実に閉じ込められ、より強力な呪力によって絶命

絶命した瞬間、その氷は細かく砕けた

『...おわ、った』

その光景を見ていた氷月はまるで第三者のような発言をし

最初から最後まで見ていた五条もあっけに取られた

数秒の間、2人は動かずに消えていった呪霊を見ていたが

今度こそ後ろに倒れた氷月は「忘れていた」痛みを思い出し、のたうち回らないが肘より上の左腕を強く抑えて悶絶していた

五条「...本当に祓うとは、思っていなかったよ」

静かに近づく五条は氷月の上でしゃがみ込む

『...そ、う、です、か』

言葉を交わす事も困難な状況であり、そして

五条「流石に後の事は任せてよ。氷月は休憩ね」

額に指を当て、呪術で眠らす

額からは大粒の汗を掻き、制服が皺になるまで掴まれていた腕

制服の上着を脱がせ確認すると、青く腫れていた

確実に骨を折ってる

呼吸も辛そうであるから、あの時のひび割れた「結界モドキ」では地面との衝撃を和らげる事がなかったと結論を出す

廃病院の呪霊は全て氷月が祓った

今回五条は氷月の保護者としていただけである、が

呪術師として登録していない彼が此処を解決したとなると、また上は煩いので

五条「...仕方がない、か」

「五条が解決した」と言う事にする

本当はしたくないが、変な報告をして上に彼が取られるのはまっぴらごめんだ

五条が背負い、そしてあの時の事を思い出す

このように呪霊と死闘を繰り広げた彼女を背負った事があると

懐かしい重みを大きさに、何処か満足げな表情をして

東京都にある、自分の「拠点」へと帰った








































――彼を見つけてくれて、ありがとう
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